1432020秋季増刊●半側空間無視などの右半球症状のある患者さんは、自己の障害を深刻に受け止めておらず、移乗などができると思って実行し、転倒するリスクが非常に高い。●検査法としては、BIT行動性無視検査日本版(石合、1999)(p.230)がある。●紙面の多数の標的に印をつける「抹消試験」では左側を見落とし、水平な線分の真ん中に印をつける「線分二等分試験」では右寄りに印をつけ、花の絵などを描き写す「模写試験」では左側を描き落とす。●両眼ともに左視野が見えない左同名性半盲とは異なり、視線や頭部を自由に動かしてよい条件で起こる症状(図2)であり、半側空間無視はあらゆる日常場面に困難を生じ得る。●障害の根底にあるのは、空間性注意の右方への偏りである。●空間性注意とは、「外界と個体との関係のなかで意識を適切な対象に集中し、また移動していく機能」である●注意が左方に向かないので、「見落としている」という意識が生じず、代償は起こりにくい。●発症から1カ月以上続いた半側空間無視は消失し難く、残存すれば自動車運転を許可できない。石合純夫図2 左同名性半盲患者さんと半側空間無視患者さんの違い左同名性半盲患者さんは左空間にも注意を向けることができ、視線を左に向けて、カーテンを開けるようにして右視野で全体を見ることができる。これに対して、半側空間無視患者さんは右にあるものに注意を引かれ、右側の対象だけを見て、なかなか左側に視線を移せない。左同名性半盲半側空間無視6視空間障害
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