2052020秋季増刊がん患者さんと認知機能障害 がんに関連する認知機能障害は総称してCancer Related Cognitive Impairment(CRCI)とよばれています。がん治療の進歩により、生存期間は大幅に改善されました。しかし多くの患者さんは、がん治療やがんという病気そのものの影響で認知に変化を感じています。記憶や実行機能、注意/集中力の低下がおもな症状ですが、最近は、CRCIが倦怠感や不安、うつをもたらすことも注目されています。とくに、化学療法後に生じた認知機能障害はchemobrain(ケモブレイン)といわれますが、化学療法開始前の約30%の患者さんにすでに認知機能障害が認められ1)、化学療法中には75%、治療終了後も35%の患者さんに長期間にわたって残存すると報告されています1)。認知機能障害の回復の程度や期間はさまざまで、日常生活の質を低下させる要因になります。CancerRelatedCognitiveImpairment(CRCI:がん関連認知機能障害)図 がん患者さんが抱えるがん関連認知機能障害(CRCI)に関する要因と支援(文献2を改変)がんに関連する認知機能障害(CRCI)●短期記憶、ワーキングメモリー●注意/集中力●実行機能●作業効率●展望記憶 などがんやがん治療にともなう要因①がんやがん治療に よる影響 ●がん ●化学療法 ●手術、麻酔 ●分子標的療法 ●ホルモン療法 ●免疫療法 ●合併症 など②生物学的要因 ●炎症やサイトカイン ●血液脳関門の変化 ●細胞の酸化還元 ストレス ●海馬の機能低下 など患者背景の要因①遺伝的要因 ー多型 ●APOE ●COMT など②患者の個人的背景 ●年齢 ●人種 ●教育歴 ●病前の知的能力 ●認知的予備力 ●併存症 血管リスク、 糖尿病など ●社会経済状態 など認知機能障害以外の変化●倦怠感●不安●うつ●心的外傷後ストレス障害●モチベーションの低下●睡眠障害●貧血、閉経(化学療法による)などマネジメント:リハビリテーション●認知行動療法●コーピング、教育●運動●ヨガ●薬物療法 (中枢神経刺激薬、 認知症治療薬など)Column 24APOE:Apolipoprotein E, COMT:catechol-O-methyltransferase
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