す。高次脳機能障害者の場合、患者さんの希望に沿う必要がある一方、すべてを受け入れると病棟生活が成り立たなくなります。話を傾聴しないといけない一方で、聞き過ぎてもいけないのです。この患者さん1人ひとりにちょうどよい対応を組み立てていく感覚、これが高次脳機能障害の看護のポイントだと考えています。幸い、患者さんを観察(評価)して対応を考えてみる、やってみてうまくいけばそれでよいし、ダメなら再調整するという構図は共通です。患者さんのある行動を止めたいと思ったときには、その止め方を工夫しないといけないことも多いですね。また、患者さんの栄養や排便を整える、なるべく車椅子に座ってもらう、リハビリテーションを含めて生活のリズムを整えるといった“基盤”を整えることは、患者さんへの対応がうまくいくことを下支えしてくれるとともに、力強い味方となってくれます。困ったらこの基盤を見返してみましょう。さあ、実際の患者さんの看護にチャレンジしてみましょう。皆さんもこの特集をヒントに、目の前の患者さんならではの答えを考えてみてください。答えは1つではありません。本特集に示した対応は、高次脳機能障害のみならず、認知面に問題をもつ脳損傷者にも共通します。さらには、認知症や発達障害などの対応にも応用できるでしょう。
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