Nutrition Care 2018 冬季増刊 11 告など、さまざまです1)。また、胃がん、大腸がんの消化器がんと肺がんの比較では、肺がん患者で有意に安静時エネルギー消費量が大きかったとの報告もみられ、エネルギー代謝はがん種によっても異なると考えられます2)。●❸がん患者の炎症反応 がん患者の免疫担当細胞などは、がんに対する生体反応として、炎症性サイトカインを産生し、慢性の炎症状態をひき起こします。代表的な炎症性サイトカインとして、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α;TNF-α)、インターロイキン1β(Interleukin-1β;IL-1β)、インターロイキン6(Interleukin-6;IL-6)、インターフェロンγ(Interferon-γ;IFN-γ)などです。がんが進行するにつれて、炎症性サイトカインの産生も増大し、それによりがん悪液質が進行します。 グラスゴー予後スコア(glasgow prognostic score;GPS)は、がんの予後予想のツールで、血清アルブミンとC反応性たんぱく(C-reactive protein;CRP)の値で決定されます。アルブミンが低く、CRPが高い場合に予後が悪いと判定されます3)。CRPは炎症性サイトカインによって産生され、それががんの予後因子として使用されています。●❹がん悪液質とその代謝 がん悪液質とは、Radbruchらにより、「従来の栄養サポートでは改善することが困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理的には、経口摂取の減少と、代謝異常による負のたんぱく質、エネルギーバランスを特徴とする」と定義されました4)。 がん悪液質は食欲不振、基礎エネルギー代謝の亢進、筋肉量の減少を主体とする病態です。がん患者の体重減少は、単なる栄養欠乏による体重減少とは異なります。飢餓状態における病態では、食欲は促進し、基礎エネルギー代謝は低下します。しかし、がん悪液質では、体重減少にもかかわらず食欲不振を呈し、代謝も亢進し、正常な摂食反応、代謝反応が欠如しています5)。悪液質は予後を悪化させる因子でもあり、化学療法や放射線療法への耐性を低下させると同時に、それらの治療法そのものも、悪液質を助長する方向に作用します。 がん悪液質の成因としては、炎症性サイトカイン、腫瘍由来悪液質誘発因子、神経ペプ第1章 がん患者の栄養療法の基礎知識 1がんの代謝異常と栄養障害
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