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Nutrition Care 2019 春季増刊10█高齢者の身体的特徴 わが国は、欧米諸国やアジア諸国が経験したこともない高度で急速な高齢化に直面しています。2018年9月現在、65歳以上の高齢者人口は約3,555万人で、高齢化率は28.1%、100歳以上の高齢者数は6万9,000人で、10年前の約2倍、20年前の約8倍です。今後も増加し続けることが見込まれます1)。 高齢者は、心肺機能、消化管機能、腎機能、免疫機能など、さまざまな臓器の機能が低下していることがあります。とくに、腎機能の低下は、たんぱく質の摂取量を決定する際や、薬剤との相互作用などを考えるうえで重要です。日本人では、1歳年をとるごとに、eGFRで0.36mL/min/1.73m2の速度で腎機能が低下するという報告があります2)。たんぱく尿が認められる人、腎機能が低下した人では、より早く腎機能が低下するといわれています(図1)2)。また、慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)の罹患率も、年齢とともに増加することが知られています(図2)3)。高齢者は、慢性的な基礎疾患を複数合併していること(co-morbidity)も少なくありません。その治療のために、複数の薬剤を内服していることもあり、有害反応(副作用)を呈するリスクも高いと考えられます。 高齢者の栄養ケアを行ううえで、大きな問題となるのが、摂食嚥下機能の低下です。脳血管障害や認知症、サルコペニアなども摂食嚥下機能が低下する原因となります。高齢者では、安全に食事を摂取できるように、嚥下機能を評価し、食形態を調整し、適切な食事介助を行い、誤嚥性肺炎の防止に細心の注意を払う必要があります。 2015(平成27)年、介護保険施設における経口維持加算の算定要件や評価方法の見直しが行われ(図3)4)、多職種で経口摂取を維持する取り組みを行う施設も増えています。見直し後の調査では、経口維持加算(Ⅰ)の算定率は54.7%、経口維持加算(Ⅱ)の算定率は34.9%でした4)。さらに多くの施設で経口維持加算が算定されるようになるとよいと思います。栄養ケア・マネジメントを行ううえで知っておきたい高齢者の身体・精神・社会的特徴吉田貞夫 よしだ・さだお医療法人ちゅうざん会ちゅうざん病院副院長/金城大学客員教授

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