3Nutrition Care 2019 秋季増刊編集にあたって ヒトの体には、内部・外部の環境変化にかかわらず、生体の状態が一定に保たれるように上手に調節する機能が備わっています。これを「恒常性の維持」といいます。この恒常性が維持できなくなった状態が水・電解質異常であり、酸塩基平衡異常です。さまざまな疾患の病態生理に恒常性の破綻が関係しており、時には生命に危険がおよぶこともあります。とくに高齢者に対しては、恒常性維持機能の低下を念頭において治療を行う必要があります。 体の水分量の調節を行うと、ナトリウムを中心に電解質が連動し、酸塩基平衡も影響を受けます。このはたらきを統合的にとらえるのはむずかしいのですが、水・電解質異常、酸塩基平衡異常を理解するためには、まずは正常時には電解質が体液内にどのように存在し、調整されているのか、酸性とアルカリ性のバランスがどのように保たれているのかという基礎知識の習得が不可欠です。 本書では、キーワードごとにイラストを用いて水・電解質・酸塩基平衡のキホンをわかりやすく解説します。キーワードで基礎知識を習得したあとは、臨床でよく出会う水・電解質異常、酸塩基平衡異常症例を紹介します。あなたの目の前にいる患者に置き換えて、ぜひ一緒に考えてみてください。2019年7月東京医科大学腎臓内科学分野主任教授/東京医科大学病院副院長菅野 義彦
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