130231951
9/12

13Nutrition Care 2019 秋季増刊体液量 一般に体内の水分のことを「体液」と呼んでいますが、体液の主要構成成分は、水やナトリウムなどの電解質や糖、アミノ酸などで、生命活動に必要な無機物と有機物を含む溶液です。体液は、生体を構成する成分としてもっとも多く、体重の約60%といわれています。体液量は個人差があり、筋肉量と脂肪量の比率によって変化します。正反対の性格や性質が合わないことの例として「水と油(脂)」といいますが、ヒトの体についても同様で、体脂肪に水分はほとんど含まれていません。したがって、一般に筋肉量が多いとされている男性は水分量が多く、約60%であるのに対して、脂肪の量が多いとされている女性の水分量は約50%と、男性より体液量が少ないとされています。また、年齢によっても差があり、一般に小児は体液量が多く、高齢者は少ないとされています。 「水分ってどれくらいとればよいですか?」は、患者からよく聞かれるフレーズの一つだと思います。われわれは、通常、のどが渴いたときに何となく水分補給をしていますが、心臓や腎臓が悪い患者では、同じ水分量を摂取していても、溢水(体液過剰)を来すことがあります。また、逆に水分摂取が十分でないと脱水を来します。過不足なく水分をとることはむずかしく感じますが、体のなかでは、つねに水分量の調整が行われています。体液分布 体液は「細胞内液」と「細胞外液」からなっています。細胞内液と細胞外液を合わせた総体液量は、体重の約60%です。細胞内と細胞外は「細胞膜」という、電解質は通りにくく、水は自由に通す膜で仕切られています。細胞膜の両側が等しい浸透圧になるように水が移動し、それぞれの水分量はおおよそ決まっています。総体液量のうち、約2/3が細胞内液、約1/3が細胞外液になるように分布しています。 さらに細胞外液は「血管内」と「間質(血管外)」に分けられます。血管内と間質の間の水分の移動は、蛋白質は通さず、電解質は自由に通す「毛細血管壁」を介して行われます。細胞外液のうち約1/4が血管内、約3/4が間質に分布しています。 個人差はありますが、体液量を体重の約60%として計算します。たとえば、体重60kgで考えると、体液量は体重の約60%なので、36kg(36L)となります。36Lの体液のうち約2/3が細胞内液ですから、24Lが細胞内液で、残りの12Lが細胞外液ということになります。12Lの細胞外液のうちの約1/4が血管内に分布していますので、血管内の血漿は3Lで、間質液は9L存在することになります。●引用・参考文献1)藤田芳郎ほか編.“研修医のための水電解質と輸液の基本:初期研修医のための輸液の基本”.研修医のための輸液・水電解質・酸塩基平衡.東京,中外医学社,2015,2-5.2)柴垣有吾.“体液恒常性維持のメカニズム”.より理解を深める!体液電解質異常と輸液.改訂3版.東京,中外医学社,2007,3-4.第     章水・電解質・酸塩基平衡のキホン1

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る