10Nutrition Care 2019 冬季増刊消化管を使うことの意義 経腸栄養が推奨される最大の理由は、消化管を介した生体防御機能の維持にあります。消化管は人体最大の免疫臓器で全身の免疫細胞の50%以上が腸管免疫系に属しており、腸管関連リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue;GALT)はこの代表です。さらに、GALTは全身のリンパ組織と連携して全身免疫防御機能を維持していることが知られています。腸管内の腸内細菌が腸管壁を通過して血管内へと移行するいわゆる“bバクテリアルacterial tトランスロケーションranslocation”は、腸管粘膜を覆う粘液などの物理的防御機構と腸壁内のGALTなどの免疫的防御機構によって防がれています。消化管を使用しないとこれらの防御機構が破綻し、全身感染症へと陥るリスクが高まります。経腸栄養の絶対的・相対的禁忌 可能な限り経腸栄養を組み込んだ栄養管理計画を立案しますが、腸が安全に使用できない表1のような場合は経腸栄養は禁忌となります。栄養療法の選択基準 栄養療法は静脈栄養と経腸栄養に大別されますが、多くの病態において経腸栄養を第一選択とすることが広く認識されています。経腸栄養を開始するためには、まず投与経路(アクセス)と投与栄養剤を決定する必要があります。栄養療法の選択基準としては古くから米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)ガイドライン1)、ならびに欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)経腸栄養ガイドライン2)がゴールドスタンダードとされており、わが国でもこ投与ルートの選択と管理上の注意点1医療法人社団蘇生会蘇生会総合病院外科部長・副院長/近畿大学医学部客員准教授 土師誠二 はじ・せいじ
元のページ ../index.html#6