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10(610)Nutrition Care 2020 vol.13 no.7てんかんの基礎知識 てんかんは、てんかん性発作をひき起こす持続性素因を特徴とする脳の障害であり、すなわち、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こるもの、とされています1)。一般的には、倒れてけいれんを起こす全般強直間代発作が知られていますが、それ以外にも、ボーっとなり呼びかけに応じなくなる複雑部分発作(意識減損焦点発作)や欠神発作、手足や体がピクっとなるミオクロニー発作(眠っているときにピクっとなることは誰にでもあります)などのさまざまな症状が起こります。 てんかんは、とくに乳幼児期と老年期に発症しやすく、有病率(ある一時点でてんかんと診断されている割合)は約1%(100人に1人)、累積発症率(一生涯でてんかんと診断される割合)は約3%(100人に3人)と、けっしてまれな病気ではありません。また、てんかんと診断されても、約6~8割の患者では抗てんかん薬の内服により発作を完全に抑制でき、さらに、年齢、種類、原因などにより大きく異なりますが、内服を終了できた患者のうち約3~9割の患者では再発せず、治ることも少なからずあります2)。 しかし、一部の患者においては、複数の抗てんかん薬によっても発作を抑制することができず、難治に経過することもあります。難治性(薬剤抵抗性)てんかんは、適切とされる抗てんかん薬を単剤あるいは多剤併用で副作用がない範囲の十分な血中濃度で2剤試みても一定期間(1年以上もしくは治療前の最長発作間隔の3倍以上の長いほう)発作を抑制できないもの、とされています1)。これは、抗てんかん薬によっても、発作が2剤目までに抑制できず、3剤目以降で抑制できた成人の患者は約5%のみであったとする報告などに基づいています。小児の患者ではかならずしもあてはまるわけではありませんが、2剤以上の抗てんかん薬によっても発作を抑制できない場合には、抗てんかん薬の調整を続けるとともに、発作の起こる脳の焦点を切除するなどの「てんかん外科治療」、そして、本稿の主題である「ケトン食療法」についても、あわせて検討していく必要があります。てんかんとケトン食療法の歴史 てんかんに対するケトン食療法について学ぶには、その歴史について知ることが近道かもしれません。 ケトン食療法の歴史は、紀元前にまでさかの1てんかんとケトン食伊藤進 いとう・すすむ▲東京女子医科大学小児科准講師

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