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ケトン食・乳和食・地中海食……etc気になる食事療法のホントの話Nutrition Care 2020 vol.13 no.7(611)11 ぼります。古代ギリシャの医師であるヒポクラテスはてんかんを「断食」により治療していたことが知られており、また、聖書にもてんかんの治療には「祈り」と「断食」を必要とすることが書かれています。これらのことからは、古代より一部の人々はてんかんには断食が有効であることを知っていたと考えられます。しかし、断食は長く続けることはできません。 1921年になり、ワイルダーが「低糖質(炭水化物)」と「高脂質」の食事が断食と同様の機序によりてんかんに有効であることを発見し、糖質が不足して疑似的な飢餓の状態となり、脂質が分解されて多量の「ケトン体」が生成されることから、「ケトン食療法」と名づけられました(図1)。 当時のケトン食の1日あたりの組成は10~15gの糖質、体重あたり1gのたんぱく質、ほかは脂質であり、現在のケトン食の組成と同様となっています。また、一時期は食事の目安としてウディヤットの式(図2)も使用されていましたが、現在では簡便に計算できる重量(エネルギーではなく)の比が使用されるようになっています。 その後、さまざまな抗てんかん薬が開発されるにつれて、一時期はケトン食療法はほとんど使用されなくなりました。しかし、抗てんかん薬でも発作を抑制できない難治性てんかんの患者にも有効なことが知られるようになり、現在図1 ケトン体の生成断食による飢餓の状態や、低糖質と高脂質の食事による疑似的な飢餓の状態により、脂質が分解されてケトン体(βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの総称)が生成される。グリコーゲングルコース(糖質)ピルビン酸遊離脂肪酸(脂質)アシルCoAアシルCoAアセト酢酸アセトンβヒドロキシ酪酸アシルカルニチンアシルカルニチン乳酸クエン酸回路アセチルCoAATP(エネルギー)ケトン体呼吸鎖ミトコンドリア

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