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58Nutrition Care 2020 春季増刊検査からわかること 赤血球(RBC)は血液の主成分であり、酸素を肺から全身へ運んでいます。ヘモグロビン(Hb、血色素)は赤血球のなかに存在する蛋白質で、酸素と結合することで赤血球が酸素を運搬することを可能にしています。ヘモグロビンは、鉄を含むヘムという色素とグロビンという蛋白質からできています。血液が赤くみえるのは、ヘモグロビンの影響です。血液検査において、赤血球数は血液1μL中に含まれる赤血球の個数、ヘモグロビンは血液1dL中に含まれるヘモグロビン量(g)で表されます。赤血球は、骨髄に存在する造血幹細胞から分化・成熟を経てつくられます。この分化・成熟を調整しているのが、腎臓で産生されるエリスロポエチンという造血ホルモンです。赤血球は体の血液のなかを循環し、最終的には脾臓や肝臓で破壊されます。赤血球の寿命は約120日といわれています。赤血球数とヘモグロビンの値により、赤血球数の絶対的な低下、または増加がわかり、貧血や多血の評価ができます。基準値と異常値 赤血球数は自動血球計数器により測定され、ヘモグロビンはシアンメトヘモグロビン法により測定されます。成人男性RBC427万~570万/μLHb13.5~17.6g/dL成人女性RBC376万~500万/μLHb11.3~15.2g/dL検査値の見方 赤血球の異常は、おもに減少(貧血)と増加(多血)に分けられますが、疾患の頻度としては貧血が圧倒的に多いです。貧血を来す病態はさまざまであり、赤血球の容積(MCV、61ページ)により、小球性貧血、正球性貧血、大球性貧血に分類することができます。各貧血を来す疾患を表1に示します1)。 小球性貧血で頻度の多いのは鉄欠乏性貧血であり、小球性貧血をみた場合は、血清鉄やフェリチン、総鉄結合能(TIBC、142ページ)などの検査で鉄が不足しているかを評価することが重要です。また、鉄欠乏性貧血と診断した場合は、鉄欠乏の原因を検索する必要があります。よくある原因としては、月経過多、消化管出血、摂取不足(偏食、ダイエット)などが考えられます。第4章 血液一般に関する検査1赤血球(RBC)/ヘモグロビン(Hb)東京医科大学腎臓内科学分野 辻つじもと・りゅうじ本隆史  東京医科大学腎臓内科学分野准教授 長ながおか・ゆめ岡由女

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