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Nutrition Care 2020 秋季増刊64血糖値 血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことを血糖値と呼びます。ヒトの血糖値はきわめて狭い範囲に維持されています。一般的には、ご飯を食べていない空腹の状況でも血糖値は70mg/dL以下にはなりませんし、また、食後の状態でも血糖値が200mg/dLを超えることはありません。 ブドウ糖は脳の主たるエネルギー源です。基本的には成熟した赤血球はブドウ糖しかエネルギーとして利用することができません。脳は全身に指令を送り、生命活動を支えていますし、赤血球は体中に酸素を運び、いろいろな臓器のエネルギー代謝を維持しています。したがって、血糖値が下がりすぎてしまうと(低血糖)、脳や赤血球が十分に機能しなくなり、時として生命活動を維持することすら困難になる場合が出てきます。 一方、食事の時間帯に関係なく、いつ血糖値を測定しても200mg/dLを超えてしまうような慢性的な高血糖が続く病態は、糖尿病と診断できます。糖尿病では、慢性的な高血糖により、生体内のたんぱく質が糖化、変性を受け、そのはたらきが低下してしまうため、網膜症や腎症、動脈硬化症や骨粗鬆症など、さまざまな臓器合併症がひき起こされてしまいます。このようにヒトにとっては、低血糖はもちろんのこと、慢性の高血糖も危険な状態であるといえます。そのため、さまざまなホルモンや神経系がはたらいて、血糖値の恒常性が維持されるよう調節されているのです。膵臓の構造 膵臓のほとんどは外分泌腺で占められていて、外分泌腺でつくられた消化酵素はファーター乳頭の開口部から十二指腸に分泌されます。そのため、膵臓は消化器系の臓器に分類されています。しかし、膵臓内部にはホルモンを分泌する内分泌細胞の集まりも観察され5血糖のコントロールとインスリンのはたらき昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授●山岸昌一 やまぎし・しょういち

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