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産業保健と看護2019春季増刊70 3 肝機能【考えられる疾患】ASTが高値の場合、肝臓疾患(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝、肝臓がんなど)のほかに心臓疾患(心筋梗塞など)、骨格筋疾患(筋ジストロフィー、多発性筋炎など)、溶血性貧血などの疾患が考えられます。また、職域においては有害物質(有機溶剤や特定化学物質など)による中毒や障害の可能性も考慮に入れる必要があります。肝機能とは肝臓は人体で最も大きな臓器であり、主に以下のような3つの働きがあります。①食事で摂取した糖やたんぱく質、コレステロールなどの脂質を代謝・貯蔵し、エネルギーとして体内に供給します。②薬やアルコールなどの有害物質の解毒に重要な役割を果たします。③脂肪の消化・吸収を助け、肝臓でできた老廃物を十二指腸へ流す胆汁を生成します。肝機能の異常を調べるには血液検査が有用で、とくにAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)などの酵素が一般的によく用いられています。肝臓には、肝細胞や胆管細胞に接するように血液の通り道があり、それぞれの細胞が血液の通り道に接しているため、肝細胞や胆管細胞に問題が起こると、細胞内の物質が血液中に漏れ出します。そのため、これらの酵素は逸脱酵素とも呼ばれ、これらの肝臓から漏れ出た酵素の種類と量(検査値)をはかることで肝機能を検査することができます。❶AST(GOT)ASTは体内の細胞でつくられ、肝臓だけではなく、心筋や骨格筋、赤血球などの細胞にも存在するトランスアミナーゼと呼ばれる血清酵素の一種です。体内でのアミノ酸代謝やエネルギー代謝の過程で重要な役割を果たします。基準値30U/L以下リスク数値51U/L以上要注意36~50U/L

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