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 産業保健実務者にとって、両立支援は言葉として出てくる前から、当たり前のように対応していたと思われます。労働人口構成の変化という社会的な問題、医療の進歩による新たな患者・労働者ニーズへの対応などのさまざまな視点で、両立支援のキーパーソンとして産業保健スタッフに注目が集まっています。産業保健スタッフは職場の細かいことまで知りうる立場ですし、医学的知識を持っているので、医療用語を職場用語に翻訳し、職場内で適切な配慮を検討するのに適したリソースであるからです。 一方で、産業保健スタッフの多くは臨床業務から離れており、新たな医療の知識を手に入れることは容易ではありません。医療の知識も、新しい治療法の普及で、治療の専門化・細分化が進みつつあります。産業保健スタッフでも、労働者や主治医とコミュニケーションをとるときに難解な医療用語に困惑したり、事業者の理解が得られにくい状況が生じたりしたことがあるのではないでしょうか。 そのような状況の中で、本増刊では事業場における両立支援を体系的に学ぶために、総論としての両立支援の目的、ガイドラインの読み方、人事労務との対応の方法、就業配慮のあり方といった一般的なことがらの解説を行いました。また、産業保健スタッフにぜひ知っておいていただきたい項目として、がん患者のストレスマネジメントについても解説しています。仕事はできるように見えても次第に蓄積するストレスは本人では気づきにくく、近くにいる上司や人事では仕事ができている以上対応しがたい分野のため、産業保健スタッフの対応が期待されています。 さらに、比較的職場でよく見られる疾患群や特徴的な疾患群を各論として解説しています。各分野の第一線で臨床に携わっておられる先生方で、かつ、両立支援の経験が豊富な先生方による執筆です。辞書的な使い方ではなく、全体を通してお読みいただければ、産業保健スタッフのみなさまの「技」の向上につながるのではないかと思います。 2020年3月産業医科大学病院 両立支援科 診療科長 立石 清一郎はじめに

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