130262003
7/8

ピロン骨折(脛骨天蓋骨折)  知っておくべき知識と各種アプローチによる骨接合術 整形外科Surgical Technique vol.10 no.3 2020(265)13軸圧型損傷であり,受傷時の足関節の肢位,外力の方向,距骨が天蓋に衝突する時間の長さなどが影響し,さまざまな形の関節面および骨幹端部の粉砕,軟部組織損傷のパターンを呈する(図1).ピロン骨折治療法の変遷 ピロン骨折の治療は合併症との戦いである.それ故,先人たちがさまざまな治療法を考案し,現在の治療法のバリエーションに至っている. 1950〜60年代にかけては,ギプス治療,牽引療法とギプス治療の併用,または早期の関節固定などが主たる治療法であり,良好な成績であったものは40〜50%にしか過ぎなかった. 1969年Rüediらは受傷後早期の観血的整復固定術(以下ORIF)による良好な治療成績を報告した4).その後多くの追随した発表がなされたが,必ずしも芳しい成績ではなかった.理由としては,Rüediらの症例はスキーなどの低エネルギー外傷が多く,交通事故や高所墜落などの高エネルギー外傷があまり含まれていなかったためとされている. 1980〜90年代には軟部組織の合併症を軽減させるため,次第に小さな侵襲で整復と固定を行う方法が発展し,小切開による部分的な内固定と創外固定の併用や,創外固定のみで治療を行う報告が相次いだ.しかしながら,感染の合併症は低下したものの,関節面や骨幹端部の変形癒合が残存し,機能予後の改善には至らなかった5). そして,2000年前後からはstaged protocolによる良好な治療成績が報告された6).Staged protocolとは,最初に創外固定による骨折部のspanningを行い,軟部組織の腫脹が改善するまでしばらく待機した後にORIFを行う方法であり,これによって合併症が劇的に減少した.このやり方は“Span,Scan,Plan”とも言われており,最初に創外固定で骨折部の“span”ningを行い,CT“scan”で術前“plan”を立てる方法である.現在も一般的な治療法として良好な成績が報告されている. 時代とともに治療法が変わるのは世の常ではあるが,どの治療法も一長一短があり,重要なことは軟部損傷の部位や程度,骨折型など個々の“キャラクター”に合わせた確実なアプローチと固定法を選択することである.治療上の問題点および合併症 患者やその家族への説明の際に強調すべき治療図1 受傷部位による骨折部位の変化(文献3より)A:足関節背屈位:前方骨折,B:中間位:前後の骨折,C:底屈位:後方の骨折BCA

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る