130262006
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アキレス腱断裂・損傷  ガイドライン改訂 確認・実践・応用 整形外科Surgical Technique vol.10 no.6 2020(649)13分に行ったうえで保存療法を選択することもある.トップスポーツ選手に対する保存療法の適応としては,厳密な管理を行った場合には十分な運動能力の回復が得られるとした報告17)がある一方,プロアスリートレベルでより早期の競技復帰を期待する場合に観血的治療を勧める,とする意見もある18).当院では患者の希望に応じて適応を判断している. 合併症としては高脂血症や末期の腎障害患者においてはアキレス腱断裂との関連が示唆されているため,仮に保存療法を行ったとしても再断裂に関して特に慎重な経過観察が必要となる.ポイント 以上のことから,新鮮アキレス腱断裂患者では,受傷後5日以内の症例で足関節最大底屈位において断端部が接合し得る症例が保存療法の適応となり得る.この条件から外れた症例や高度なスポーツ活動を行う症例,あるいは高脂血症や腎障害などの合併症を有する症例に対しては,再断裂の可能性などについて特に慎重に説明を行ったうえで適応を判断する.保存療法の実際 足関節底屈位でギプス固定を行うが,固定肢位や期間については統一した見解はない.しかし,約6週間程度のギプス固定を行う従来型の保存療法では手術療法に比較して再断裂率が高いとする報告が多い.一方,早期運動療法を用いた保存療法では手術療法と比較して再断裂率に差はないとするメタアナリシスも見られる19). 早期運動療法を用いた保存療法では底屈位でギプス固定を1週間行う(図2).その間も患部外の筋力維持訓練やタオルギャザー訓練は施行する(図3).その後アキレス腱用ブーツを装着し,疼痛の許す範囲で荷重歩行を許可する.当科で使用しているブーツ型装具は踵部に数枚の楔状パッドを挿入し足関節の底屈角度を調節できるようになっている(図4).治療開始から2週間が経過すると底屈動作を自動運動として開始し,4週目以降図1 アキレス腱断裂の超音波画像A:背屈位において血腫で充満している断裂部(*)は約1.5cm開大している.B:底屈位では断端は5mm程度まで近接している(†). AB

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