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肩外傷に対するリバース型人工肩関節  髄内釘,プレート,人工骨頭との使い分けと機種選択 整形外科Surgical Technique vol.11 no.1 2021(13)13 なぜ回転中心をmedializeすると肩の挙上ができるのか? 次にリバース人工関節の基礎知識・原理について解説する.まず,リバース人工肩関節のCORからの延長線(図2,赤破線)とこれを含むaxial planeを想定する.①破線より上に位置する三角筋量を比較するとmedialization of CORによって肩関節の挙上に参加できる三角筋量が増し(図2A,B),上肢の延長でその緊張が挙がる(図2B,C).このように①medialization of CORと②lowering of the humerusという2つのコンセプトはリバース人工肩関節の機能にとって最も根源的である(図2).骨折続発症に対する手術の発展 一方,上腕骨近位部骨折続発症は,最初にNeerが提唱したように肩関節再建手術のなかでも最も治療が困難な状況に陥ることがある2).当初は,大量の骨欠損や関節変形により,機能的な再建は不可能なことも多かった.骨欠損や関節変形の著しい症例には,解剖型人工肩関節置換術や人工骨頭置換術が施行されたが,上腕骨近位部骨折続発症でもたらされる病態があまりに多彩かつ複雑であるためにその機能予後の予測は困難であった.さらに骨折患者は,変形性関節症患者より若年であることも多く,人工関節の適応には正確な予後判断が求められる. 本邦では,2014年4月にリバース型人工肩関節置換術が承認された.リバース型人工肩関節全置換術は術中および術後合併症が,高率に発生すると報告されていた.本邦での2014年の導入前に日本整形外科学会主導で,リバース型人工肩関節全置換術を適正かつ安全に施行するためのガイドラインを策定し,これまで厳密な実施医基準のもと施行されてきた.過去5年間の腱板症例での使用経験を経て,昨年2019年1月に日本骨折治療学会図1 通常の肩関節挙上とリバース型人工肩関節のコンセプトA: 正常肩では腱板で回転中心が固定され,三角筋で回転モーメントが発生する.B: 腱板不全では,モーメントは発生せず,肩峰下インピンジを起こす.C: リバース型人工肩関節置換術では回転中心(center of rotation:COI)を内方(medialize)し,同時に 上肢を伸ばすこと(lowering of the humerus)で 肩の挙上を再現する.上肢の延長距離はAcromio-tuberosity distanceなどで計測する.Normal shoulder①medialization of COR②lowering of the humerusABCacromio-tuberositydistancemedializationof center ofrotation(COR)

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