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12(150)整形外科Surgical Technique vol.11 no.2 2021はじめに 脛骨プラトー骨折は,脛骨近位の関節面に生じた骨折である.受傷時の外力の程度によって低エネルギー外傷と高エネルギー外傷によって生じる骨折がある.最も多い外側プラトー骨折は,本骨折の55〜70%を占め,多くは低エネルギー外傷によって生じる.一方で内側プラトー骨折(10〜23%),両顆(Bicondylar Plateau,10〜30%)骨折は多くの場合,高エネルギー外傷によって生じており,大きく治療戦略が異なってくることを十分に理解する必要がある1).関節内骨折の治療においては,関節面の解剖学的整復と強固な内固定による早期の関節運動を可能にすることが機能回復に重要な役割をもつ.さまざまなタイプの脛骨プラトー骨折の基礎から応用までそれぞれの骨折のパターンに応じた治療戦略を理解し,すべての骨折に対応できることが不可欠である.保存治療,手術治療の適応 多くの関節内骨折においては,関節面の転位(step-offおよびgap)の程度によって,手術適応が決定する.特に股関節や足関節などの関節では2mmの関節面の転位が残存した場合には,早期に関節症が進行する危険性が高いことが報告されている.一方,プラトー骨折に関してはstep-offに関してはそこまで厳密ではないようである2,3). プラトー骨折の治療の適応を判断する際には,①関節アラインメント,②不安定性,③関節面の適合性などをもとに複合的に評価する必要がある.膝関節においては,アラインメント不良や不安定性の残存が最も重要な因子となり,急速に関節症が進行する危険性が高い.特に内反変形や不安定性は許容してはならない.そして,ほとんどの内側プラトー骨折および両顆骨折は,アラインメント不良および不安定性を有するため,転位を認める症例の多くは手術加療の適応である.一方で,関節面の圧潰は,外側プラトー骨折に生じることが多い.これは,生理的な膝関節の軸が約6°外反していること,外側は内側よりも関節面が少し高くなっていることに加えて,外側プラトーの軟骨下骨が内側と比較して疎であることが原因と考えられている4).対照的に骨質の密な内側プラトーでは関節面の圧潰を生じることはまれであり,多くの場合は剪断骨折を生じている(図1).外側プ1[オーバービュー]総論:治療にあたる前に知っておくべき基礎知識依光正則 Masanori Yorimitsu岡山労災病院整形外科部長〒702-8055 岡山市南区築港緑町1-10-25

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