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CHAP.1CHAP.2CHAP.3CHAP.4総論 がん患者の緩和ケア苦痛症状の患者説明ガイド症状緩和のための治療・処置疼痛治療の薬剤ポイント集プロフェッショナルがんナーシング 2017 春季増刊31適切で効果的な説明と介入のために看護師が理解しておくべきことどんな患者に説明が必要か? 胸水は、健康な人でも胸膜腔に少量存在し、呼吸をする際に肺と胸腔との間の抵抗を減らす“潤滑油”としての働きがあります。胸水は壁側胸膜から産生され、臓側胸膜から吸収されていますが、吸収量が減ったり産生量が増えたりした場合に、胸水が増加します。 悪性胸水の説明は、主に肺がん患者、肺や肺の近くのリンパ節に転移している患者が対象になります。看護師は、大量の胸水貯留に伴い呼吸困難を訴えている患者自身が、病状や治療を理解しながら、自分らしい日常生活を整えられるように支援していきましょう。患者説明の際に気を付けたいポイント 患者は、胸水がたまり呼吸困難が出現すると水の中で溺れている状態となり、「息が苦しい」「死んでしまう」と感じます。しかし、「なぜ苦しいのか」「どうすればこの苦しみが和らぐのか」ということはわからず、息の苦しさだけでなく不安と恐怖を抱いています。看護師は、患者の抱えるつらさを理解し、つらさの原因について患者に説明する必要があります。これは、患者が自分の病状を理解し、不安と恐怖を軽減するだけでなく、つらさに合わせてその人らしい生活を送るためです。 胸水がたまり呼吸困難を引き起こす原因として、①胸壁と横隔膜の運動制限による肺の膨張を阻害する状態 ②換気と血流の不一致を起こすように肺を圧迫する状態 ③換気不全による低酸素血症、が挙げられます。それにより、呼吸困難だけでなく、頭痛や動悸、倦怠感も現れてきます。 また、呼吸困難は「呼吸に関する主観的な不快な感覚」といわれ、上記①〜③の肺の病気の有無にかかわらず気持ちのつらさを呼吸困難という形で表現し、症状が発生することがあります。 呼吸困難が出現すると、体のつらさを感じるだけでなく、仕事や家事、食事や排泄など日常的に行なっていた活動ができず、気持ちの落ち込みを感じることがあります。すると、呼吸困難を感じるセンサーが敏感になり、症状を認識しやすくなりさらに症状が強くなります。看護師は、患者にさまざまな事柄が影響して呼吸困難が出ることを説明し、その対策について、患者の状態に合わせて説明を行なっていく必要があります。確認しておきたい患者情報、特に注意が必要なケース 呼吸困難は、胸水量が増えるだけでは出現しません。一般的に500mL以上貯留すると症状が出現するといわれています。胸水が貯留すると肺が圧迫されてしまうので、酸素をたくさん取り込めるようにするため、横になることができず、自然と座る姿勢が多くなります。 症状が強いと少しの行動さえ苦しく、楽な姿勢ができなくなり、生活行動が行なえなくなります。その場合に、胸水を抜いたり、胸水がたまらないようにする、酸素不足を解消する、苦しいと感じるセンサーを鈍らせるような治療を行ない、症状を和らげて、少しでも楽に生活ができるように支援しましょう。 しかし、呼吸困難を和らげる治療により副作用で熱が出たり痛みが出るなど苦痛を伴うことがあり、治療そのものが体力の消耗を引

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