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70代女性 胃がん術後の再発 20年以上前、外科医師として働き始めたころの看取り、それは書籍『病院で死ぬということ』1)に書かれていたシーンそのものでした。「がん告知などNG」の時代、「なぜ病院でこんなに治療をがんばっているのに、よくならないのか」という患者さんの問いに医師やナース、ご家族も「がんばって、きっとよくなるから」と励ますことしかできませんでした。本心でのコミュニケーションなどできるはずがありません。そして、最期のとき、医療従事者は当たり前のように、救命処置を施していました。患者さんに寄り添う1 医師になって8年目、「緩和医療」をとても意識するきっかけになった患者さん・ご家族と出会いました。胃癌の告知、手術、再発の告知、化学療法、と主治医としてかかわりました。化学療法中止後も患者さんのそばにいることが、自分のなかでは当たり前のことになっていました。人生のこと、仕事のこと、家族のこと……。私は患者さんの物語を聴いていただけでした。患者さんの死亡確認をしたあと、ご家族から「先生、最高の緩和医療をありがとう」と枕元で握手を求められたのです。症例緩和ケア患者さんの物語に寄り添うことの大切さに気づいた症例232  YORi-SOUがんナーシング 2019 春季増刊

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