はじめに東邦大学医療センター大森病院 緩和ケアセンター 部長/東邦大学医学部 臨床腫瘍学講座・医学教育センター 准教授中村陽一わが国の緩和ケアは、がん医療の一分野として着実に広まりをみせています。患者さん、ご家族にも医療従事者から緩和ケアに関しての情報提供がなされ、われわれ緩和ケアに専門的に従事する医療者を紹介されることも多くなっています。緩和ケアを担う人材の育成に関しては、各職種に対する緩和ケア研修会が全国の各施設で実施されており、本増刊を手に取られた読者の方々の多くはすでに参加されているものと思います。緩和ケアでは「患者さん、ご家族のつらさに焦点を当てる」ことが大切だとされています。しかし、これは緩和ケアだけのことでしょうか? すべての医療に通ずる共通の目標であるはずです。緩和ケアは決して特別なものではなく、「全ての医療従事者がその基本的知識、技能、態度で提供すべき医療である」といえるでしょう。本増刊は、これから緩和ケアに取り組もうとしている看護師さんや緩和ケア以外の領域に携わっている看護師さんに向けて執筆したものです。がん緩和医療における知識を一通り確認できるよう項目を作成しました。看護師以外の医療従事者や学生さんにも、知識の整理をしていただくツールになれば、編者としてうれしく思います。また、各項目に関連するような症例を提示し、イメージがつけられるような工夫しています。本書を通じて、一次緩和ケアに求められている知識を整理して、より多くの医療従事者が緩和ケアに興味を持っていただければ幸いです。
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