緩和ケアの定義(WHO 2002年) 世界保健機関(WHO)によって、緩和ケアの定義(2002年)が定められています。いままで日本でもこの定義のもとに緩和ケアが発展してきましたが、各団体や訳者によってさまざまな日本語訳が存在していました。2018年に、日本における定訳が、日本緩和医療学会をはじめとする関連団体により定められました(図1)1)。日本語訳が定められたことで、医療従事者間で緩和ケアの認識をあらためて共有することができ、今後の普及が望まれています。 本増刊の導入として、この「緩和ケアの定義」を6W1Hの視点から考えてみました。Whom 緩和ケアはだれに届けるの? 緩和ケアの定義(定訳)1)に「患者とその家族」と記されています。われわれ医療従事者はご家族を、「患者さんとともに説明を聞く人」あるいは患者さん自身による意思決定が困難になったときの「代諾者」の第一候補としての存在だけにしていないでしょうか。ご家族自身も患者さんの病による、種々のつらさを感じているはずです。ご家族のつらさに焦点を当てたケアを提供することも、緩和ケアの重要な役割のひとつです。What 緩和ケアでは何をするの? 「痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応する」ことを、緩和ケアでは実践しています1)。身体的苦痛(疼痛、呼吸困難、嘔吐、食欲不振などの身体の症状)、心理的苦痛(心のつらさ、不安、せん妄など)、社会的苦痛(仕事上の問題、家庭内の問題など)、スピリチュアルペイン(自律性の喪失、価値観の変化など)の4つの痛みを全人的苦痛(total pain)といいます。 ここで気をつけることは、患者さんの苦痛やつらさを4つのカテゴリーに分類することあらためて緩和ケアの定義を考えるA 緩和ケアとは10 YORi-SOUがんナーシング 2019 春季増刊
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