緩和ケアとはAが目的なのではなく、われわれ医療従事者が4方向から患者さんを評価することが重要という点です。すなわち、この患者さんの「身体的苦痛はどうだろうか」「心理的苦痛はどうだろうか」「社会的苦痛はどうだろうか」そして、「スピリチュアルな訴えはないだろうか」と評価することが大事になってきます。Why なぜ緩和ケアが必要なの? 緩和ケアは「QOLを(中略)向上させるアプローチである」と定義されています1)。これを証明した研究として、Temelらによる報告があります2)。非小細胞肺癌の患者さんを対象とした無作為化比較試験において、早期に専門的緩和ケアを導入した群は、通常治療群に比べQOLや気分を改善した、と報告されています。この研究ではほかに、早期からの緩和ケアが導入された群は終末期の化学療法の実施が少なかったにもかかわらず、生存期間が延長したことも証明されています。When いつ緩和ケアが必要なの? 緩和ケアの定義には、「早期に」と記載されています1)。この早期という言葉は、「早期がん」のことではありません。病気の早い段階からという意味です。包括的がん医療モデルを図2に示します。縦軸が治療の割合、横軸が時間経過です。病気の経過によって治緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。緩和ケアは・痛みやその他のつらい症状を和らげる・生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える・死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない・心理的およびスピリチュアルなケアを含む・患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する・患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する・患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う・QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある・病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む図1緩和ケアの定義(WHO 2002年)日本緩和医療学会.緒言・提言:「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳.http://www.jspm.ne.jp/proposal/proposal.html(2018年10月閲覧)より引用YORi-SOUがんナーシング 2019 春季増刊 11
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