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20  YORi-SOU がんナーシング 2021年 春季増刊呼吸困難・息切れ(薬剤性間質性肺炎)は…▶薬剤性間質性肺炎の発生機序はほとんど解明されていませんが、抗がん薬のような細胞障害性薬剤によって肺の細胞自体が障害を受けることや、医薬品に対する免疫反応が原因と考えられています。▶薬剤性間質性肺炎はすべての抗がん薬または支持療法薬において発現する可能性があります。▶特に注意すべき薬剤としては、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬やmTOR阻害薬などです。●薬剤性間質性肺炎の発現頻度が高い主な薬剤を表1に示しました。使用する薬剤の発現頻度を治療開始前に把握するようにしましょう。●ブレオマイシンは全投与量が450〜500 mg/ m2を超えると発現頻度が上がるため、累積投与量に注意します。また、腎臓の排泄能が低下することにより薬剤の血中濃度が高くなることでリスクが高まる要因となるため、腎機能の評価も大切です。●患者さん側のリスク因子として、年齢60歳以上、既存の肺病変(特に間質性肺炎)、肺手術後、呼吸機能の低下、酸素投与、肺への放射線照射、抗悪性腫瘍薬の多剤併用療法、腎障害の存在などがあげられます1)。●オシメルチニブにおいては、間質性肺疾患の病歴およびニボルマブ前治療歴が間質性肺疾患の発現因子となることが示唆されています。❶治療開始前のリスク因子の把握が重要!薬剤性間質性肺炎の発現頻度が高い主な薬剤表1薬剤出現頻度抗がん薬ゲムシタビン1.0%ペメトレキセド3.6%イリノテカン0.9%ブレオマイシン10%分子標的薬エベロリムス11.6%テムシロリムス6.2%ゲフィチニブ1〜10%エルロチニブ肺がん4.4%、膵がん6.4%アファチニブ1.3%オシメルチニブ3.6%クリゾチニブ2.1%アレクチニブ5.3%アベマシクリブ2.0%パルボシクリブ頻度不明トラスツズマブ エムタンシン1.3%トラスツズマブ デルクステカン8.2%(各薬剤添付文書を参考に作成)▶呼吸困難の増強や呼吸不全(低酸素血症)、意識障害などを呈している状態に注意が必要です。▶一般的に薬剤の投与後2〜3週間から2〜3カ月で発症するものが多いですが、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による間質性肺炎は投与開始後1カ月(特に2週間)以内に発現することが多いです。

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