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10  YORi-SOU がんナーシング 2021年 春季増刊概論 がん薬物療法と副作用症状への対応 菅野かおり公益社団法人 日本看護協会神戸研修センター 教育研修部認定看護師教育課程 課長がんの3大治療として手術療法、放射線療法、薬物療法があります。手術療法と放射線療法は、がん細胞の存在する組織などの局所に対する治療法であるため、副作用(有害事象)も限定的なものが多いです。一方、薬物療法は全身治療であり、局所進行がんから未治療の進行がん、再発がんまでと治療の対象は幅広く、副作用も多岐にわたります。さらに、最近では局所療法との組み合わせによる集学的治療が広く行なわれるようになり、薬物療法に対する期待は大きくなっています。がん薬物療法とは、薬剤(殺細胞性抗がん〈腫瘍〉薬、分子標的薬、ホルモン薬、支持療法薬など)を用いてがん細胞を死滅させたり、がん細胞の増殖を抑えたり、がんによる身体症状を緩和したりする目的で行なう治療の総称です。長い間、「がん化学療法」という言葉が広く用いられてきましたが、これは主に殺細胞性抗がん薬による治療のことを指していました。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、多種の薬剤が使用されている現在では「がん薬物療法」と表現するこがんの代表的な治療法がん薬物療法とが多くなっています。●誕生がん薬物療法の歴史はほかの治療法よりも浅く、1940年代に兵器としての毒ガスから抗がん薬が開発されたのをきっかけに誕生しました。そのあと、多数の殺細胞性抗がん薬が誕生してきましたが、これらの薬剤はがん細胞に非特異的で正常細胞にも薬効を示すため、脱毛や悪心・嘔吐、末梢神経障害などといった、患者さんにとってつらい副作用症状が出現することが必至であり、課題でした。●1960年代1960年代になると治療効果だけでなく、患者さんのQOL(quality of life:生活の質)が着目されるようになり、支持療法の開発や症状マネジメントの必要性が注目されるようになってきました。今では普通に使用できるセロトニン受容体拮抗薬や顆粒球コロニー刺激因子などが登場したのがこの時代です。これらの支持療法は、がん薬物療法を受ける患者さんに大きな利益をもたらしてきました。●2000年代2000年以降になるとヒトゲノムやがんのホールマークが解明され、がん細胞の生死や増殖等にかかわる分子(タンパク)を標的とした分子標的薬(抗がん薬物療法の変遷

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