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YORi-SOU がんナーシング 2021年 春季増刊  11概論がん薬物療法と副作用症状への対応  体薬、チロシンキナーゼ阻害薬、血管新生阻害薬など)の開発が盛んになりました。これらの薬は標的としている細胞(分子)に対してのみ効果を示すため、副作用も限定されていますが、今までになかった皮膚症状(アクネ様皮疹、皮膚炎、爪囲炎、角化など)やインフュージョンリアクションなどの副作用が出現し、そのメカニズムの理解や対処方法を見いだすのに今でも苦労しています。●2010年代2010年代に入るとがん細胞や免疫監視機構、腫瘍微小環境における免疫抑制のメカニズムなどが明らかになり、免疫を活性化させて細胞を攻撃するタイプの免疫チェックポイント阻害薬が登場しました。この薬の登場で、今までがん薬物療法による恩恵を受けていなかったがん種にも効果をもたらしていますが、免疫反応関連副作用(immune-related Adverse Events;irAE)の出現があり、その観察と対応が重要なキーになっています。重篤な免疫反応関連の副作用症状が出現するのはまれですが、1型糖尿病の発症など急変に対応しなければならない場合があるので、よく理解したうえで患者支援にあたる必要があります(表1、図1)。これまでに述べてきたように、新規薬剤や治療法の開発は患者さんに生存期間の延長や症状緩和といった利益をもたらす一方で、新たな副作用症状の管理、複雑な投与方法の理解など医療者の負担は大きくなっています。特に、薬剤の副作用管理に関しては、観察方法や対処方法、患者指導内容など使用する薬剤の特徴と患者さんのセルフケア能力によって工夫(個別性)が必要であり、非常に複雑な状況が看護師を悩ませています。がん薬物療法の副作用症状の出現は、使用する薬の種類や薬の組み合わせ、投与量、投与スケジュールに起因しますが、これ以外にも患者側の要因が大きく関与しています。患者側の要因としては、基礎疾患の有無、合併症の有無、主要臓器の機能障害の有無、アドヒアランスを含むセルフケア能力、理解力などがあります(図2)。副作用症状への管理・対応代表的ながん薬物療法薬の種類表1殺細胞性抗がん薬分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬その他アルキル化薬微小管阻害薬代謝拮抗薬白金製剤トポイソメラーゼ阻害薬抗がん性抗生物質小分子化合物 チロシンキナーゼ阻害薬 mTOR阻害薬 プロテアソーム阻害薬 HDAC阻害薬 CDK阻害薬抗CTLA-4抗体薬抗PD-1抗体薬抗PD-L1抗体薬分化誘導療法薬 レチノイド 三酸化亜ヒ酸抗体薬 細胞表面抗原に対する抗体薬 血管新生阻害薬 抗上皮成長因子受容体抗体 抗HER2抗体薬ホルモン療法薬

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