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492 眼科グラフィック vol.8 no.5 2019OCTA画像 読影の基本はじめに 1961年と1973年にフルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluorescein angiography;FA)とインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocya-nine green angiography;ICGA)がそれぞれ登場して以降1,2),眼科疾患における網脈絡膜の血管病変,循環動態評価にFA/ICGAは必要不可欠な検査となった.網膜血管透過性亢進や無灌流領域,網脈絡膜新生血管などはFA/ICGAにより鮮明に描出され,特に糖尿病網膜症,網脈動静脈閉塞症,加齢黄斑変性ではFA/ICGAが診断,治療方針決定において重要な検査である.しかしながら,FA/ICGAは造影剤検査であることから腎障害,アナフィラキシーといったリスクを伴う侵襲的な検査3)であり,短期間において頻回に行う検査としては現実的ではない.また,1回の検査に伴う検査時間も他の眼科的検査と比較して決して短いものではない. Optical coherence tomography angiography(OCT angiography;OCTA)は光干渉断層計(OCT)を用いて3次元血流分布を表示する技術の総称で,2006年に初めて報告された4).FA/ICGAと異なり,造影剤を使用することなく,非侵襲的,短時間に網脈絡膜の血流情報を層別(3次元的)に評価が可能である新しいイメージングモダリティーである.通常のOCTの検査と同様に来院ごとのOCTAの検査が可能であり,治療効果判定を含む病変の変化を縦断的に評価できるメリットがある5).またFA/ICGAでは読み取りづらい網膜血管の深層構造や深さ方向の情報も,OCTAでは深さ方向に高解像度かつ高コントラストで網膜血管構造を層別(3次元的)に評価することも可能である(図1).ただし,OCTAの異常所見の読影および病態把握のためには正常網脈絡膜の微小循環とOCTA所見の対比の理解,そしてOCTA特有のアーチファクトについての理解が必要不可欠である.本稿では,正常眼における網脈絡膜のOCTA所見と特に注意すべきOCTAのアーチファクトについて概説する.正常網脈絡膜 ヒトの網膜は網膜血管と脈絡膜血管により血液供給を受けている.網膜血管は網膜最表層から内顆粒層までの内層を栄養し,脈絡膜血管は網膜外層を栄養している.網膜中心動脈由来である網膜血管は,最表層の放射状乳頭周囲毛細血管(radial peripapillary capillaries;RPCs),表層毛細血管網(superficial capillary plexus;SCP),中層毛細血管網(intermediate capillary plexus;ICP)および深層毛細血管網(deep capillary plexus;正常眼とアーチファクト加登本 伸 Shin Kadomoto京都大学大学院医学研究科 眼科学教室〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町54

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