624 眼科グラフィック vol.8 no.6 2019子どもの近視進行を予防し,子どもの近視を減らす!はじめに 平成30年度学校保健統計調査によれば,裸眼視力1.0未満の割合は,小学生で34%,中学生で56%,高校生で67%となっており,特に高校生において前年度比較で5%増となっているのが注目される.現在スマートフォン保有率は13〜19歳で80%に達しており,近視人口急増の原因になることも懸念されるが,裏付ける科学的根拠は得られていない. 学童の近視進行速度には個体差があり,眼鏡装用者では平均0.7D/年,最大2D/年に達する(図1)1).近視進行は15〜16歳ごろまで持続することが多いため,この間は年1〜3回の定期検査が必要であろう.一方,小児は豊富な調節力を持つため,自動レフラクトメータ(自動レフ)で正確に屈折度を求めるのは容易ではない.また成人と比べて自覚的検査の信頼性が劣ることが多い.そこで本章では,子どもの近視の検査と管理について考えてみたい.近視の基本的検査1)非調節麻痺下の自動レフラクトメータ 自動レフの多くは,自動雲霧装置を搭載している.光学的に視標イメージを網膜前方に移動させる(雲霧する)ことで,像のボケに起因する調節反応を軽減させる.さらに遠方に置かれたかのような物体(気球,風車など)を視標に用いることで,近接性調節を軽減し,屈折度を求めようとするものである.しかし調節に影響するその他の因子である輻湊性調節や緊張性調節を取り除くことはできず,10Dを超す豊富な調節力を持つ小児では,しばしば検査中に調節変動が起こり,近視は過大評価される(図2).このため自動レフの結果のみで眼鏡処方することは問題があり,自覚的屈折検査やオーバー・レフラクションを併用して検査結果の妥当性を確かめる必要がある.検査結果に疑問が残る時は,調節麻痺下の屈折検査を行うべきである.子どもの近視の検査と管理の基本長谷部 聡 Satoshi Hasebe川崎医科大学眼科学2教室〒700-8505 岡山市北区中山下2-6-1図1 軽度〜中等度近視で眼鏡装用中の小学生における近視進行速度の度数分布近視進行速度(D/年)中央値 0.7 D/年最大値 1.7 D/年252015105(n=92)0.000.501.001.502.00度数(人)
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