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眼科グラフィック vol.8 no.6 2019 6252)自覚的屈折検査(レンズ交換法,赤緑試験) 自覚的屈折検査では,網膜後方への焦点ずれは調節によって容易に代償されるため,近視を過大評価しないことが大切である. 片眼を遮閉した後,検査眼に,まず自動レフで得られた球面度数より2〜3Dほどプラス寄りの球面レンズ(−3.00D なら−1.00Dのレンズ)を装着させ,雲霧をかける.この度数を起点として−0.25Dまたは−0.5Dのステップで,マイナスパワーを追加してゆく.5mの視力表は次第にクリアになり,もし乱視が円柱レンズで十分矯正されていれば,最高視力1.0〜2.0に達する.この度数を超えてさらにマイナスパワーを強めていくと,しばらくは見え方には変化がない(調節力による過矯正の代償).屈折度(完全矯正)を得るには,最高視力が得られる最も弱いマイナスパワーを求めればよい(表1).これをレンズ交換法というが,レンズを交換するたびに視力を測る必要はない(検査効率を低下させ,患児の集中力を妨げる).−0.25または−0.50Dの加入レンズを矯正眼鏡の前で繰り返し着脱しながら,どちらがよりクリアに見えるかのみを慎重に判断させるとよい. これは色収差を利用した赤緑試験でも同様である.視標が赤と緑で等しくクリアに見える最も弱いマイナスパワーが完全矯正である.厳密には,眼球の焦点深度だけ,他覚的屈折検査の結果とは食い違いが生じるはずである.3)調節麻痺下の屈折検査 臨床研究においては,調節麻痺下の自動レフ値が屈折検査のゴールド・スタンダードとされる.ミドリンⓇ P(参天製薬)は簡便であるが,調節麻痺効果が弱く,推奨できない.また調節麻痺効果は点眼後30分でピークに達し,その後急速に失われることに注意する(散瞳が見られるからといって調節麻痺があるとは限らない)2). 調節麻痺薬として信頼性できるのはサイプレジンⓇ1%点眼液を(参天製薬)である.しかしサイプレジンⓇ1%点眼液には,①点眼時の刺激が強いこと,②調節麻痺効果が得られるまで1時間を要すること,③検査後に散瞳作用や調節麻痺作用が約24時間残ること,④まれに精神症状が現れることなど短所がある.筆者は,刺激による流涙を防ぎ,かつ眼内浸透力を高めるためベノキシールⓇ点眼液0.4%(参天製薬)1回点眼後,5分間隔で2回サイプレジンⓇ1%点眼液を点眼し,1時間後に屈折検査を行っている.自覚的屈折検査を行う時は,直径3mmの人工瞳孔を装着させ,散瞳による球面収差の影響を取り除く必要がある.4)オーバー・レフラクション サイプレジンⓇ1%点眼液には上記の理由により,定期検査のたびに使用することは難しい.次に信頼できる他覚的屈折検査としては,レチノスコープ(図3)によるオーバー・レフラクションが挙げられる.前置レンズで雲霧をかけると同時に,遠方に置かれた実際の視標を両眼で見ながら図2 非調節麻痺下の自動レフラクトメータ検査でみられる近視の過大評価(69人の近視小学生の測定結果)非調節麻痺下のレフ値と調節麻痺下のレフ値の差(D)1.501.000.500.00-0.50調節麻痺下レフ値(D)過大評価過小評価-6-5-4-3-2-1

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