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眼科グラフィック vol.9 no.2 2020 125 レシピエント角膜も同様に切開を行うが,手術室への移動を考慮し,切開部角膜厚の約9割程度の切開としている.その後手術室に移動し,マニピュレーターを用いて鈍的に切開創の剝離を行い,残りの部分をカッチン剪刀などで切開する.その後は,マニュアルトレパンを用いた全層角膜移植に準ずるが,4針仮縫合した時点で前房の安定性が高まり,粘弾性物質の漏出もわずかとなり,手術全体を通じて視認性にも優れる印象を受ける. “トップハット”,“マッシュルーム”,“ジグザグ”形状といったさまざまな角膜移植片が提唱されているが(図3),従来の角膜移植に比較していずれも創口の接触面積が広く,角膜生体力学特性の観点からも優れている.IgnacioやSteinertらは,“トップハット”形状の全層角膜移植では,従来の角膜移植に比較して約7倍の創口強度を認めると言及している1,2).またFSLを使って角膜表面にアライメント用マーキングを作製し,ドナー・レシピエント角膜それぞれに対してより正確な縫合を行うことも可能である3).従来のトレパンを用いた方法に比較して,創口適合性が良好であることから,タイトな縫合が不要となり(図4),早期の視機能回復,角膜・屈折乱視の軽減,より早期に抜糸が可能となることが報告されている2,4,5).FSLを用いた表層角膜移植  上記と同様にして,FSLによって一定の深さでドナー角膜の切開を行う.レシピエント角膜は,前眼部OCT(optical coherence tomography)を用いて混濁の深さを定量し,それよりやや深い位置で切開を行う.その後マニピュレーターを用いて鈍的な剝離を行い,ドナー角膜をレシピエント角膜上にはめ込むような感じで組織を合わせる.この際,ドナー・レシピエント角膜片に対する垂図3 FSLによる角膜移植片の形状“トップハット”,“マッシュルーム”,“ジグザグ”形状などさまざまな角膜移植片が作製できる.Top Hat型Mushroom型Zig Zag型内皮多く移植可上皮多く移植可創口適合性良好

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