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248 眼科グラフィック vol.9 no.3 2020はじめての眼瞼下垂手術はじめに 挙筋腱膜縫着術は,眼瞼下垂手術のなかでも比較的有名で適応の症例も多い術式であるが,眼瞼手術初心者には難易度の高い手術でもある. まずは正しく検査や診断を行い,挙筋腱膜縫着術の適応を見極められるようにならなければならない. 本稿では,これから眼瞼手術を始める医師に向けて挙筋腱膜縫着術はどういう手術か,診断のための診察や検査の方法,また手術初心者はどのような症例を選べばよいかについて述べる.上眼瞼の解剖(図1) 解剖の詳細については,良書を参考にしていただきたい.ここでは,今回のテーマである挙筋腱膜縫着術において必要な解剖について触れる. 上眼瞼挙筋は上眼瞼を挙上する筋肉であり,上直筋と並行して走行している. 瞼板から14〜20mm後方には,横方向に走行する白色のWhitnall靱帯(上横走靱帯)があり,上眼瞼挙筋はこのWhitnall靱帯のやや遠位部で上眼瞼挙筋腱膜へと移行する1). 挙筋腱膜は前層と後層に分かれており,前層は眼窩隔膜に連続し,後層はMüller筋の前方を走行して瞼板の前面に付着する2). 眼窩隔膜と挙筋腱膜前層との移行部,ちょうど眼窩隔膜の折り返し部位には,白く光沢のある組織を認める.この部位は,挙筋腱膜縫着術を行う際に通糸する場所の指標となる. また,挙筋腱膜からは眼輪筋と皮下に穿通枝が存在し,穿通枝が発達していると重瞼線ができる.開瞼により挙筋腱膜が上方に引き込まれ,上眼瞼の皮膚に折り目(皺)ができる.この皺の上に皮膚が垂れ下がることによって,重瞼となる1).術 式 眼瞼下垂手術にはいくつか術式があるが,「挙筋〇〇術」と類似した名称があるため紛らわしい.症例の選び方:挙筋腱膜縫着術Go! ▶ 加藤桂子 Keiko Kato東邦大学医療センター大森病院 眼科〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1眼窩隔膜眼窩脂肪眼瞼挙筋腱膜前層眼窩隔膜折り返し部位眼瞼挙筋腱膜後層腱膜の穿通枝瞼板Müller筋Whitnall靱帯上眼瞼挙筋上直筋図1 上眼瞼の解剖上眼瞼の⽮状断である.上眼瞼挙筋は上直筋と並⾛して後⽅へ向かって⾛⾏している.挙筋腱膜前層と眼窩隔膜の移⾏部(眼窩隔膜の折り返し部位)が挙筋腱膜縫着術を⾏う際の指標となる.

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