130282003
7/8

眼科グラフィック vol.9 no.3 2020 249 そこで,それぞれの術式や適応について簡単に整理しておく.1)挙筋腱膜縫着術 Müller筋はそのままで,挙筋腱膜のみを瞼板に縫着する術式である.挙筋腱膜前転術ともよばれる. 適応は,挙筋腱膜が瞼板から外れることによって起こる腱膜性眼瞼下垂である.さらに,挙筋機能が5mm以上ある症例が適応となる3). 腱膜性の眼瞼下垂で最も多いのは,退行性(老人性)眼瞼下垂(図2)であり4),ほかにコンタクトレンズによる眼瞼下垂(図3)や眼科手術後による眼瞼下垂がある.2)挙筋短縮術 挙筋腱膜とMüller筋を前転・短縮する術式である5,6). 成人の軽度の先天眼瞼下垂に適応がある5). ベル現象(閉瞼時に眼球が上転する現象)がない症例は禁忌である7).3)挙筋短縮術+Whitnall靱帯吊り上げ術 挙筋腱膜とMüller筋の短縮(挙筋短縮術)に,Whitnall靱帯を同時に縫合する術式である. 主に,小児の高度な先天眼瞼下垂が適応である8).4)前頭筋吊り上げ術 眼輪筋の下に吊り上げ素材を移植して,瞼板と前頭筋を連結する術式である. 挙筋機能のない後天性眼瞼下垂や先天眼瞼下垂で,眉毛挙上ができる症例が適応となる3,5,8).診察・検査 挙筋腱膜縫着術を行うためには,腱膜性の眼瞼下垂であることを診断することが必要である.そこで,診察のポイントや,検査の方法と注意点について説明する.1)写真を撮る 額が入るように顔の写真を撮る.眼瞼の左右差や眉毛の位置,眼位などの確認ができるように撮影する.眼球突出の有無を見るには,斜め前方や上方から撮るとわかりやすい. 写真は患者への説明時にも使用でき,術前,術後の変化も比較できる.2)問診・視診 多くの眼瞼下垂は,問診と視診で鑑別ができる.図2 退⾏性眼瞼下垂 右は中等度,左は⾓膜反射が⾒えず⾼度の眼瞼下垂である.眉⽑が挙上され前額部に皺を認める. 図3 コンタクトレンズによる眼瞼下垂右に⾼度の眼瞼下垂と眉⽑挙上を認める.コンタクトレンズによる眼瞼下垂も腱膜性眼瞼下垂であり挙筋腱膜縫着術の適応となる.

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る