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医療と介護 Next 2017 秋季増刊6 高齢化が深刻なのは、都会か農山村か。 日本人は難しい計算が好きなので、高齢化とは「高齢化率が高いこと」だと考えがちだ。高齢化率より絶対数 高齢化率とは、人口100人の中に占める65歳以上の高齢者の比率だが、これが高いことが高齢化なのであれば、若者が出て行き年寄りが取り残されている農山村の方が、高齢化は深刻だということになる。 だが「高齢者の絶対数が増えていくこと」が高齢化だと考えると、どうだろうか。実際問題、いくら高齢化率が低かろうと、高齢者の絶対数が増えていれば医療福祉の負担額は増えていき、自治体の財政は苦しくなる。株式会社日本総合研究所主席研究員。株式会社日本政策投資銀行特任顧問、NPO法人地域経営支援ネットワーク理事長。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』(共著)、『藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた』など。藻も谷たに浩こう介すけ医療福祉の課題は里山原理の導入で解決できる『デフレの正体』で人口減少が不況の真因と喝破して7年。超高齢社会に突入しているわが国の諸問題は、『里山資本主義』を援用して乗り越えられる。そのためには、どうすればよいか。 逆にいくら高齢化率が高くとも、高齢者の絶対数が減り始めているのであれば、医療福祉サービスの需給にも余裕が生まれ、医療福祉の負担額は減り始めて、財政にもむしろ子育て支援にお金を回す余裕が出てくる。増加のスピードが問題 保育園の待機児童問題に関してもまったく同じ構図がある。 いま日本で一番待機児童問題が深刻なのは東京の都心部だ。それは人口に占める幼児の比率が高いからだろうか。実態は逆で、東京都心部は人口に占める子どもの割合がもともと極端に低い地域であり、そこに幼児が急増し始めたので、保育所が足りなくなっているのである。 つまり、比率の高さではなく筆者の写真:青木優佳撮影高齢者は激増するが 絶望することはない1

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