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医療と介護 Next 2017 秋季増刊第1部超高齢社会への処方箋医療福祉の課題は里山原理の導入で解決できる7絶対数の増加の速さが、問題を引き起こしている。高齢者の医療福祉も同じで、二言目には出てくる高齢化率というのは、現場で問題になっている事柄ではない。高齢者の数が急増しているのか、していないのかが、医療福祉の現場の状況を決めているのである。 それではいま高齢者の絶対数が増えているのは、都会か、農山村か。答えは都会だ。高度成長期に流れ込んだ当時の「ヤング」が、半世紀近くたって続々65歳、75歳を超えつつあり、そのために医療福祉サービスの需給逼迫と自治体の負担増が深刻化している。 逆に高度成長期に若者を都会に出す側だった過疎地ほど、今では新たに高齢者になる人は少ない。加えて、高度成長期に出て行きそびれて地元に残った昭和一桁以前生まれが亡くなり始めているために、むしろ高齢者が減り始めている。過疎地より大都市 数字を見よう。2015年から、団塊の世代が75歳を超える2025年までの足元10年間の変化でいえば、全国の75歳以上人口は1646万人から2179万人へと、+533万人、32%も増加する。 10年間で3割増というこのハイペースを、そもそも医療福祉関係者は理解していなくてはならない。そのうち首都圏1都3県での増加が、397万人→572万人(+175万人、44%増)だ。足元10年間に全国で増加する75歳以上人口の3人に1人は首都圏1都3県での増加なのであり、対して島根県などの過疎県では75歳以上人口の増加がもう止まる。(以上の数字は、国立社会保障・人口問題研究所 2013年都道府県予測による)。 繰り返すが、高齢化問題は、過疎地ではなく大都市圏の問題なのだ。田舎は高齢化に強い それでは大都市圏の医療福祉の近未来は、どのようなものになるのか。医療福祉の需給逼迫や孤立死の増加は、どう考えても避けられない。高齢者の増加ペースが急速過ぎるのだ。 しかし絶望することはない。先んじて高齢化した農村には、大都市圏の30年後の人口構造を先取りしているところがたくさんあるが、どこも社会は崩壊していない。農村には高齢化に強い社会構造があるからだ。この、高齢化に強い農村の社会構造、田舎の原理を「里山原理」と呼ぶことにしよう。高齢者が激増中の大都市に、高齢者が楽しく生きられる里山原理をどのくらい取り入れることができるかで、その近未来の姿は大きく変わっ

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