第1部座談会 介護保険の未来を語るPart 1 介護保険が生み出したもの医療と介護 Next 2018 秋季増刊7 それが介護保険が始まって5年たち、特別養護老人ホームに入っている人の要介護度別の人数、認知症の人がどこにどれだけいるか、などいろんなことがわかった。これはすごいことです。80年代末、当時の厚生省痴呆性老人対策本部で仕事をしたときも、認知症の人の数は推計値だったし、どこにいるかもまったくわからない状態でした。データに基づく行政が実現中村●介護保険というのは要介護認定をして、そのデータが集まってくる。それも電子請求していただいているので、すぐに集計できる。これはすごい。措置の時代は決算が上がってきて全国の統計が出てくるまでに2、3年かかっていたんですよ。廣江●そうだったでしょうねえ。中村●だから、措置時代は統計に基づいて施策を考えるとき、現実はもっと先に行っているわけです。データにもとづいた行政がほとんどできなかった。やっているつもりでも手探りの状態だったんですが、介護保険創設後は非常によく見えるようになりました。たとえば、認知症の人は要介護認定を受けている人の半分で、施設に入っている人の8割であるとか、そういうことが見えてきました。 もうひとつ、介護保険がスタートした2000年4月の介護保険給付費の72%は施設サービスでした。90年代、あんなに在宅サービスの充実と言われていたのに、在宅サービスへの給付は28%しかなく、これにはショックを受けました。そんなわけで認知症高齢者のケアを厚くしなきゃいけない、在宅サービスも脆弱である、ということが課題として浮かび上がり、地域包括支援センターを制度化するとか、地域密着型サービスをつくるとか、そういう改正を05年に実施しました。廣江●私は事業者ですから、改正のたびにドキドキして身が縮まる思いでした。 数ある改正の中でも地域包括支援センターができたことは画期的だったと思います。できた当時はよくわからなかったんですけど。いま、これがうまく育っているところとそうでないところ、市町村によって如実に差が出てきていて、やはり地方自治の試金石です。制度を左右するほどに廣江●地域包括支援センターがもっと充実すれば、地域でこれから一番重要になってくる予防事業や、医療との連携のキーポイントになると思うんですね。地域包括支援センター創設の画期的な意義
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