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うしても自信がなければ、ほかの人に再測定を依頼するのも1つの方法でしょう。変動パターンをみるバイタルサインに限らないのですが、患者さんの生体情報(血液生化学検査や心電図検査の結果など)は、一度の測定結果そのものよりも、変動のパターンがより重要であることが多くあります。例えば、血圧の基準値を120/80mmHgとしましょう。血圧のコントロールがうまくいかず、つねづね170〜180台/90〜100台mmHgの人の血圧が、あるとき突然120/80mmHgとなったら、それ自体は常日ごろよりも基準値に近い値ですが、患者さんにとっては低血圧状態であって、一概にヨシ!とはいえないのです。同様に、認知症があり時折つじつまが合わないことをいう人が今また、つじつまが合わないことをいうことと、さっきまで良好に意思疎通ができていた人が突然、つじつまの合わないことをいうことでは、その意味は大きく異なります。患者さんの疾患や治療薬剤の影響により、その人のベースラインとなるバイタルサインの値はさまざまです。甲状腺機能が低下している人は基準値よりも低い体温がベースラインかもしれませんし、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を持つ人の呼吸数は、常に基準値よりも多いかもしれません。基準値を心にとどめながらも、とらわれすぎないことが肝要です。大切なことは、そのバイタルサインの測定値で、その患者さんの生体機能がバランスを保っているか否かなのです。バイタルサインから次の行動に…つなげよう一つひとつのバイタルサイン測定値のアセスメントに加え、各バイタルサイン同士や、患者さんのバイタルサインに影響を与えるほかの要因(既往歴や治療など)との関連をみることも必要です。先ほどの、血圧がつねづね170〜180台/90〜100台mmHgの人が突然120/80mmHgとなった例を取り上げてみましょう。意識レベルに変化はなく、体温、呼吸数、脈拍数も普段と変わりはありません。特に気分が悪いといったこともないそうです。そうであれば、例えば30分後にフォローアップの再測定を計画しても良いかもしれません。しかし、もし患者さんにその朝から新しい降圧薬が追加されたのであれば、想定以上に降圧効果が強く出ている可能性もあります。長時間作用性の薬剤であれば、より綿密なフォローアップと、また場合によっては、次回の内服時間までに処方したドクターに報告することが必要となるかもしれません。また、この例で、血圧以外のバイタルサインの変動、例えば急激な発熱が認められれば、患者さんは菌血症を起こしているかもしれません。もしくは、患者さんに消化管潰かい瘍ようの既往があれば、潰瘍から出血しているのかもしれません。「脈拍数はどうだろうか? 意識レベルは?」いずれも速やかに担当ドクターに報告し、それぞれに応じた観察を行うことが必要になります。そして適切な観察項目を選択するには、バイタルサイン同士やバイタルサインに影響を与えるほかの要因との関連から、バイタルサインが変動している原因を考える必要があるのです。バイタルサインの測定およびアセスメントに際して追加的な考慮を要する対象者加齢による生体機能の変化により、高齢者はそれ以前の年齢層に比べて疾患に罹患しやすくなり、病院を受診する機会が多くなります。高齢者といっても70歳の人もいれば90歳の人もいてさまざまですが、バイタルサインの測定およびアセスメントに際して、より若い対象者とは異なる考慮すべき点がいくつかあります。1つは生体機能の変化に関連した測定値の変化です。一覧表などで提示されている基準値と比較する際に年齢を考慮する必要があります。加齢とともに収縮期血圧が上昇する傾向がある、1秒量(FEV1)が低下するなどというのはその例です。ただし、測定値の変化が加齢による生理的(ともいえる)変化を反映しているのか、その時点では診断されていない何らかの疾患に由来するものかは慎重に考える必要があります。呼吸数がちょっとだけ、基準値より多い高齢の患者さんについて「年齢によるものかな?」と思っていても、診察を受けたら慢性閉塞性肺疾患と診断された、などということになるかもしれません。高齢者のバイタルサインをアセスメントするときには加齢による変化を考慮しつつ、同時に加齢によらない異常を見逃さないよう注意が必要です。また高齢者は体重に占める体液の割合が成人より少ないという特徴があります(体液区分を思い出してください)ので、水分出すい納とうバランスを考える際には考慮する必要があるでしょう。対照的に、小児の患者さんであれば体重に占める体液の割合が成人よりも多いですから、や9バイタルサインのおさらい1章1…バイタルサインでは何をみる?

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