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10 急性期にある患者の家族の特徴 家族の一員が急性状態となることで、その家族成員にも影響があります。急性状態の患者の家族は、患者の生命に見通しがつかないという不確実さや、かけがえのない存在の喪失への不安など、①身内の生命危機の脅威にさらされることになります。また、療養費用や生活費用などの経済的負担、看護や介護による身体的負担など、②家族内の役割変更や分担が否応なく起こる場合もあります。 看護師は「病気の身体部分」ではなく、「病気をもち生活している人」を対象とします。すなわち、全人的な視点で対象を深く理解することが求められます(表1-1-2)。急性期にある患者の看護においては、「身体の背景」と「生活の背景」とを理解した上で、侵襲によって起こっている状態と、これから予測されるリスクとを考えながらケアを行うことがポイントとなります。 看護の役割と看護活動 生命に直結する機能の回復と維持を最優先する 急性期の対象は健康状態の危機的状況にあり、予後への移行期にあるといえます。急性期におけるかかわりが患者の予後を左右するといえるでしょう。生命に直結する、循環、呼吸、脳の機能回復と維持するために、優先的に治療ができるようにケアをしていく必要があります(図1-1-2)。 そのためには、急性期の看護ではキュアの要素を含むケア、すなわち医学と看護学との共同課題への取り組みが重要です。救命のための共同課題とは、病態生理に焦点を合わせたもので、顕在性または潜在性の合併症を指します。異常を早期に発見し、合併症を予防するため、看護師は医師および関連するさまざまな専門職と協働し、対象の生命維持と回復における問題を特定し、ともに解決を図ります。このとき、看護師の独自の機能として、生活の視点をしっかり持ち続けていくことが重要です。 一般的に、急性期では身体ケアが優先されますが、同時に生活ケアも行います。回復に従って生活ケアが増えていきます。このバランスの変化をイメージして、現在は何が優先されるのか、個別の情報をとらえながら変化に応じたケアを意識することがポイントです(図1-1-3)。241表1-1-2 対象の理解成長・発達段階に関する特徴年齢・性別・発達課題など身体的特徴身長・体重・形態・機能・苦痛など健康上の背景既往歴・現病歴・主訴・健康認識・治療など生活上の背景生活習慣・自己概念・価値・信念・役割など

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