12Point気管切開を施行する前頚部には気管以外に重要な神経、動脈、静脈が集中している。気管およびその周辺解剖は呼吸に関与するだけでなく、発声にも大きな影響を及ぼしている。十分な解剖とそれらの機能の理解が必要である。気管切開に関する局所解剖1気管切開とは日本救急医学会のホームページの「医学用語解説集」1)には気管切開は「外科的気道確保の一方法で、前頸部で気管軟骨(通常、第2~第4気管軟骨)を切開し、チューブもしくはカニューレを挿入して気道を確保する手術。tracheotomyを一時的な気道確保、tracheostomyを永続的な気管外瘻として区別する場合もある。適応は、①上気道狭窄や閉塞(外傷、炎症、腫瘍、異物など)、②遷延性意識障害患者の気道確保と誤嚥の予防、③長期間の人工呼吸管理、④肺炎や無気肺により頻回な気道の吸引や洗浄が必要な場合、⑤頭頸部悪性腫瘍などの手術時、などがあげられる。最近では、経皮的気管切開セットを用いて行うこともある。なお、緊急度の高い場合の外科的気道確保法として、気管軟骨ではなく、輪状甲状靱帯を穿刺ないし切開する輪状甲状靱帯穿刺・切開が推奨されている」と述べられている。気管切開の状態が慢性化し、気管カニューレの交換を医師の指示のもとに行う前に、その前提となる“気管切開”について理解しておく必要がある。解剖と構造気管とその周辺の解剖は少なくとも知っておきたい。キーワードは以下にあげるもので、位置、走行、性状を熟知してほしい(図1)。•気管〔喉頭軟骨(甲状軟骨)、輪状軟骨、第1軟骨輪、膜様部、軟骨部〕•甲状腺(右葉、左葉、峡部)•胸骨(胸骨柄、胸骨体)•前頸静脈、上•下甲状腺動脈、最下甲状腺静脈、上•中•下甲状腺静脈、左・右腕頭静脈、無名静脈、腕頭動脈、左・右総頸動脈、左・右内頸静脈•反回神経、迷走神経
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