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131章1気管切開に関する局所解剖•食道•胸鎖乳突筋、広頸筋、前頸筋群(胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、胸骨甲状筋)図1においては、大動脈弓から直接出る動脈は、通常は前方から腕頭動脈(brachiocephalic artery)、左総頸動脈(left common carotid artery)、左鎖骨下動脈(left subclavian artery)の3本がある。正面から見るとこれらの動脈の根部は重なって見えることが多いと思われるが、シェーマとして明確に示していることに留意してほしい。通常の気管切開において問題になることはないが、左腕頭静脈(無名静脈)は胸骨正中切開において胸骨柄の背側を用指剝離するときにはいつも気にしなければならない重要な血管である。切開をする部位と体位さて、気管切開では図2左に示すように、Jacksonの安全三角と呼ばれる逆2等辺三角形のなかでは安全に縦切開を行えるといわれている。気管切開を施行する部位は、体表面であるため自分の前頸部を自己触診すれば理解できる。男性であれば“のどぼとけ”(喉仏、欧米ではアダムのリンゴ)といわれる喉頭結節が触れるはずであるが、甲状軟骨が突出して高くなっている部位がある(図2右)。そのすぐ尾側に輪状軟骨があり、正中を上下方向に走行する頸部気管が続くが、この部位に気管切開孔がおかれるのである。 用語解説無む名めい静じょう脈みゃく(innomi-nate vein)気管を左右に横ぎる静脈を臨床医はよく“無名静脈”(innominate vein)と呼ぶ。その理由について『解剖学実習の手引き』2)には以下のように書かれていた。「解剖学の元祖ともいうべきガレノス(Gale-nos、130~200)が、名前をつけるのを怠ったので、この血管は長らく“名なしのごんべえ”であった。後年ベサリウス(Vesalius、1514~1564)がようやく名前をつけてくれたのであるが、その名というのが「命名されざる血管」であった。これではあんまり無責任な名前なので、Jena解剖学名(JNA)の制定(1935)時に、ドイツの解剖学者たちがbrachiocephalicaという、いかにも理屈張って味気ない名にかえてしまったのである」。1右内頸静脈左内頸静脈右鎖骨下動脈&静脈腕頭動脈右腕頭静脈左腕頭静脈(無名静脈)上大静脈右反回神経甲状軟骨左反回神経左総頸動脈右総頸動脈左鎖骨下動脈&静脈左迷走神経右迷走神経図1. 気管周囲の解剖図

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