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14ろう孔は腹壁を介し直下にある腹膜に覆われた胃、腸、膀胱に交通している。胃ろうは上腹部、腸ろうは臍周囲、膀胱ろうは下腹部に造設されている。ろう孔は短く、チューブは抜去されやすい。抜去後、速やかにろう孔は閉鎖する。ろう孔からのリークは腹膜炎など重大な合併症の引き金になる。Point胃ろう、腸ろうおよび 膀胱ろうに関する局所解剖1 ろう孔とは、2つの器官につながる異常な交通路をいう。病的なろう孔と人工的なろう孔があり、体内で生じたものを内ろう、体外とで生じたものを外ろうと呼んでいる。 病的なろう孔として多いのは、クローン病、痔疾患、慢性炎症、悪性腫瘍、異物(魚骨など)、放射線療法などに引き続き生じるろう孔で、痔ろう、腸ろう、直腸・膀胱ろう、胆嚢・十二指腸ろう、直腸・膣ろうなどがある。 人工的なろう孔は、治療目的にて造設される外ろうが一般的である。人工的なろう孔はそのままであれば創傷治癒機転が働き、数時間~数日にて自然閉鎖する。このため、閉鎖させずに持続するろう孔であるためには、ろう孔内に何らかの管を通しておかなければならない。その管は体表面外に露出する異物であり、日常生活に支障をきたす場合もある。また、長年にわたって使用することが多いため、安定したろう孔が求められる。このことから、もっぱら腹側の体表面から近い場所にある臓器が対象となる。胃、腸、膀胱が代表的なものである。体表面と胃、腸、膀胱に人工的な交通を造設したものをそれぞれ胃ろう、腸ろうおよび膀胱ろうと呼ぶ。いずれのろう孔にもチューブやカテーテルを挿入しているために皮膚・腹壁感染や管の劣化破損を防止するために定期的な管理、交換が必要とされている。 おおまかな解剖を図示する(図1)。 膀胱は骨盤底の腹側に存在し、両側方には内外腸骨動静脈と肛門挙筋群、背側には男性では直腸が、女性では膣が存在する。 膀胱ろう造設に関係する腹側の尾側側には恥骨が存在し、頭側側には腹膜を胃ろう、腸ろう膀胱ろう

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