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211皮膚、皮下組織の局所解剖1章毛器官(毛と毛包)、汗腺、皮脂腺から構成される。(1)毛器官毛器官は触覚装置として知覚神経の補助的役割をもつほかに、頭部では外力や光線からの保護、高温や低温からの保温を担う。睫毛はほこりの侵入を防ぎ、腋毛および陰毛は摩擦による皮膚への機械的刺激をやわらげている。頭髪は約10万本存在しているといわれる。毛器官は口唇、手掌足底、粘膜を除く全身の皮膚に存在し、毛とそれを囲む組織である毛包から構成されている。(2)汗腺ヒトの汗腺には、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺と、腋窩・乳房・外陰部等の特定部位に存在するアポクリン汗腺の2種類がある。エクリン汗腺は体温調節や角層の水分供給源とともに発汗が皮膚浸潤にも関係する。アポクリン汗腺は腋臭や体臭に関係する。どちらも盲管状の腺で、分泌部と汗管からなる。分泌部は真皮深層から皮下組織にかけて脂肪組織に囲まれて存在する。(3)皮脂腺皮脂腺は皮脂を産生する器官である。皮脂は、皮膚の表面において汗などの水分と混合、乳化し、表面脂肪酸を形成して皮膚の表面をコーティングする。皮脂は皮膚の不感蒸泄の抑制や保湿作用を有し、角層の水分保持に役立っている。皮脂腺は手掌や足底を除く全身の皮膚および一部の粘膜に分布する。発達した脂腺が多数集まった部位を脂漏部位と呼び、被髪頭部や前額、眉間、鼻翼、鼻唇溝など(いわゆるTゾーン)、胸骨部、腋窩、臍囲、外陰部が相当する。年齢により皮脂の分泌量は変化し、新生児では多く産生されるが、小児期では少なく、思春期から再び増加しはじめる。女性では10~20歳代に、男性では30~40歳代にピークを迎え、以後減少していく。爪は、爪そう甲こう、爪そう母ぼ、爪そう郭かく、爪そう床しょうからなる角化性の上皮組織であり、各部には肉眼的および組織学的にさらに細かい名称が付けられている(図6)。爪は従来、表皮の角層が特殊に分化したものであると考えられていたが、近年は表皮と毛の両方の性状をあわせもつ組織であると考えられている。1日に約0.1mm伸長し、爪甲全体の再生には6~12か月を要する。高齢者では伸長が遅くなり、肥厚して褐色調を呈する。爪は、指趾先端の保護や指先の微妙な感覚などに重要な役割を果たす。付属器5爪6

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