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1章1感染症の病態生理19NK細胞が破壊する。(2)獲得免疫 一方、獲得免疫は、自然免疫で対応できなかったときに働く。侵入した病原体に対して特異的に対応する。マクロファージがヘルパーT細胞に抗原提示をする。B細胞が活性化され、形質細胞となり、抗体を産生する(液性免疫)。キラーT細胞が活性化され、感染細胞や腫瘍細胞を破壊する(細胞性免疫)。(3)皮膚・粘膜のバリア 免疫以外にも皮膚や粘膜のバリアもある。皮膚は厚い細胞層で多くの微生物の侵入を阻止している。外界と通じている消化管、呼吸器、泌尿器、生殖器などの表面はすべて粘膜に覆われている。例えば、胃の粘膜からは塩酸とタンパク質分解酵素が分泌され、微生物を殺している。気道粘膜細胞には線毛があって、この線毛のはたらきによって粉塵や微生物を含んだ粘液は口腔のほうに排出され、病原体の肺への侵入を防いでいる。また、皮膚、口腔内、腸管内には多数の常在菌が存在している。この常在菌によって、病原菌の繁殖が抑えられている。4病原微生物と臓器の関係 微生物はどの臓器にでも感染できるわけではなく、感染しやすい臓器とそうではない臓器がある。ヒトには免疫があるので、外からの病原体の侵入を防いだり、体内の病原体の過剰な繁殖を防いだりする働きがある。病原微生物がヒトの体内で繁殖するにはこれらの免疫を回避して、侵入したり、繁殖したりしなければならない。 例えば、肺炎球菌は肺炎、髄膜炎の原因菌になりやすいが、尿路感染症の原因菌にはならない。大腸菌は尿路感染症、腹腔内感染症の原因菌になりやすいが、肺炎はまれである。黄色ブドウ球菌は蜂巣炎、関節炎の原因菌にはなりやすいが、肺炎、尿路感染症の原因菌にはなりにくい。このように菌ごとに感染臓器は大体決まっているので、感染臓器が分かれば、病原微生物の推測ができて、抗菌薬選択の際に役立つ。5主要疾患の病態生理 肺炎の原因になる微生物は、主に気道から侵入する。通常は、咳反射、粘膜の線毛、肺胞マクロファージによって微生物の侵入を防ぐが、この防御反応で処理しきれなかったときに、肺炎を発症する。 膀胱炎は、腸管内の細菌が尿道口から進入し、膀胱で増殖し発症する。さらに尿管を介して、腎臓まで到達すれば、腎盂腎炎を発症する。

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