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16 内頚静脈は、胸鎖乳突筋の胸骨頭と鎖骨頭および鎖骨によって形成される頚三角内の皮下約1㎝の深さに存在する。この部位での内頚静脈の走行は、通常気管にほぼ平行である。頚三角の頂点から同側乳頭方向に穿刺するセントラルアプローチは、総頚動脈の誤穿刺を避ける方向であるが、内頚静脈の走行とは異なる。 仮に、セントラルアプローチで内頚静脈を捉えられず、深く刺すと鎖骨下動脈や肺が存在していて危険である。内頚静脈の背側には、鎖骨下動脈から分枝する甲状頚動脈、下甲状腺動脈、頚横動脈、上行頚動脈、肩甲上動脈等の細動脈に加え、椎骨動脈等が存在し、同様に危険である。これらの動脈誤穿刺を回避するには、深く刺さない、内側に向けて刺さないといった注意が必要であり1)、同側の乳頭の方向を穿刺する方法がよく用いられる。より鎖骨に近い位置で穿刺する場合、内頚静脈は鎖骨に近づくにつれて、縦隔に入るために、内側に屈曲していくことに注意しなければならない。内頚静脈の走行が直線だという先入観があると、内頚静脈を外すだけでなく、穿刺針が肺に向かい危険である。 また、このカテーテル挿入経路は患者の首の動きを制限し、穿刺部皮膚から血管までの走行距離が短いため鎖骨下穿刺経路よりもカテーテル血流感染症の発症頻度が高い2,3)ことから一般的には長期留置には不適当とされている。4 外頚静脈穿刺経路(図4) 穿刺によりカテーテル挿入する方法と静脈切開によりカテーテル挿入する方法がある。外頚静脈は通常は体表より見えるので、穿刺や切開部位の決定は容易である。しかし、血管の走行がいったん外側へ向かってから内側へ向かい上大静脈に到達するという解剖学的特徴をもっている。このためカテーテルの挿入方向には注意を要する。また、静脈切開法による場合、皮下にすぐ血管が見られそうであるが、広頚筋の背側に位置しているため、この筋肉を剥離してから血管を同定しなくてはならないので注意が必要である。 内頚静脈と同様に穿刺部位と血管までの距離が短いのでカテーテル血流感染の発生頻度が高くなるため、長期間留置する場合は皮下トンネルを作成するが、鋭角になりやすいので皮下トンネル作成方向には注意して行う。5 橈側皮静脈穿刺経路(図5) 橈側皮静脈は上腕外側を経由して肩の部分で鎖骨下静脈に合流する。固定の面から肩の部分で静脈切開を行う方法が一般的で、安定した管理が可能である。橈側皮静脈は三角筋と大胸筋の間に形成される三角筋・胸筋間溝を走行しているが、この部位を確認しながら操作すれば、比較的容易に橈側皮静脈を同定することができる。超音波ガイド下に穿刺することも可能であるが、刺入部が屈曲しないように注意が必要である。

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