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151糖尿病とインスリン療法に関する局所解剖1章 インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である。 インスリン分泌の量的・質的(速やかな分泌が起らないなど)不足(インスリン分泌不全)または、インスリン作用の障害(インスリン抵抗性)によって、インスリンの供給と各組織での需要バランスが崩れ、血糖値の上昇をもたらす。 糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、その他、妊娠糖尿病と成因によって分類されるが、インスリン作用不足が進行し、糖質代謝異常の是正にインスリン注射が必要不可欠な状態(インスリン依存状態)になることがある(後述P17)。 速効型(超速効型)インスリン製剤は注射シリンジ内では6量体というインスリン分子が6つ集まった形となっている。皮下注射されたインスリンは6量体から3つの2量体、そして6つの単量体と解離するにつれて毛細血管へ吸収されやすくなる。 超速効型インスリンは皮下注射後速やかに解離するため、速効型と比較して速やかな吸収・効果発現が可能となっている。 これに対し、持効型インスリンは皮下注射後に一時的に結晶化したり、6量体同士が結合したダイヘキサマー構造を形成したりする。さらにダイヘキサマーはアルブミンと結合し、ダイヘキサマー同士がマルチヘキサマーを構成することもある。これらの構成物がゆっくりと解離し、単量体を持続的に生み出すことによって、長い作用時間を可能にしている。糖代謝とインスリン糖尿病とは1インスリン作用インスリンは膵ランゲルハンス島β細胞で生成・分泌され、門脈から肝臓へ達し、肝静脈を経て全身の細胞に送られる。インスリン感受性のある肝臓・骨格筋・脂肪組織などでブドウ糖の細胞内への取り込み、エネルギー利用や貯蔵、タンパク質・脂肪の合成に関わる。結果、血糖低下作用を発揮する。また、細胞の増殖などを促進する作用もある。 用語解説糖尿病の病態2糖尿病の成因分類(後述)3インスリン製剤の吸収機序(図2)図2.皮下注射後のインスリン吸収過程皮下組織毛細血管単量体超速効型インスリン注射解離吸収速効型インスリン6量体2量体単量体

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