3患者さんの症状から身体の中で起こっていることを推論し、緊急度や対応を判断する力は、看護師にとって非常に重要です。臨床推論は臨床判断をするうえでの「引き出し」になります。臨床判断のプロセスの途中で繰り返し確認をし、違う「引き出し」を用いることで、判断の適切性や根拠を確認することができます。そして、ベテランの看護師ほど多くの「引き出し」をもっています。一方、学生や新人看護師は、臨床推論に用いる「引き出し」が少なく、看護行為の選択肢が少なく、思い込んで行動してしまう傾向があります。しかし、臨床推論はトレーニングをすることで得ることができる能力といわれています。臨床推論を初めて学ぶ看護師の皆様が、病態や疾患などの「知識」と目の前の患者さんの「症状」とを結びつけるための看護の思考プロセスとなる「推論技術」の基礎を、身近な事例で学ぶことを目的に本書を作成しました。本書は症状別の知識本ではありません。「考え方を学ぶ」本です。看護師は、多様な症状、多様な発達過程の患者さんを相手に適切な看護ケアを提供します。皆様はこれからも多くの状況や症状に出会います。本書を通して、代表的な「症状」「発達の特徴」をテーマに臨床でよく起こる事例を読み取りながら、緊急度を判断する思考プロセスをトレーニングしてください。そうやって「引き出し」を増やすことで、初めての症状に出会ったときに、どのように思考すればよいかということに応用して、自分自身でさらに「引き出し」を増やし発展していけるように使っていただけるとよいと思います。本書を手にした皆様の「学び方を学ぶ」一助となりますことを願います。2019年6月 小澤知子はじめに
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