はじめに 本書を手に取ってくださり、ありがとうございます。 学生時代や社会人として働きはじめたころの自分を振り返ると、コミュニケーションが苦手で、人間関係につまずいていました。「こんなことを言ったらどう思われるかな」と相手の顔色をうかがい本音を話せず、「私はそうは思わない」けれど波風が立たないようにと自分を主張せず、「こうしたらどうかな」とがんばって周りに気をつかっているつもりなのにうまくいかず……。挙げ句に「胃が痛い」「頭が痛い」「よく眠れない」と体調不良に陥り、憂うつな日々を過ごしている時期がありました。大なり小なり、こんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。 「このままでは耐えられない」「なんとかしたい」「自分が変わりたい」と思って探し出したのがパラダイムシフトコミュニケーションⓇです。そこで学んだコミュニケーションセンスは、単なるスキルに留まらず、もっと奥深いレベルから私を変容させてくれました。やっていることは簡単で、“観察して試す”だけのことなのに、いつの間にか「自分が話したいことを言って伝わっている」「自分が生きたいように生きている」と、それまで出せなかった自分を表現し、しかも自然に周囲の人と調和していて、どんどんと楽に過ごせるようになっていきました。とくに私が身につけたのは、生きかたの本質に作用するセンスでした。 このセンスを身につけるポイントは、①観察することと②試すことの2点のくり返しです。そのときに、頭で考えて理解しようとするのではなく、自分の感性や感覚をフルに使って感じながら行動するのです。たったこれだけのことをするだけで、自転車に乗るようにセンスが身につくのですから、試す価値があります。 本書は、メディカ出版の月刊誌『透析ケア』に、2017年1月号から2018年4
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