はじめに 筆者は総合診療科医です。いわゆる“専門”はありませんが、どのような症状であっても対応できるように日々努力しています。 「困った人は助けたい」という気持ちから救急車を断らない病院づくりをしています。一人の患者を一人の人として診るために、多職種で話し合いながら集中治療だろうと往診だろうと最後まで責任をもって診られるシステムづくりにも注力してきました。専門性を持たない自分のスタイルは医師としては多くはないものです。しかし「自分の専門ではないから」と看護を断る看護師はいないことから分かるように、看護の世界ではすべての疾患を分け隔てなく看ることは珍しくないでしょう。そういった意味において、われわれ総合診療科医は看護師と最も近い立場にいる医師かも知れません。 今まで筆者が目の前の患者さんを診るために培ってきた知識の中でも、特に看護領域と共通する身体診察(フィジカルアセスメント)を取り上げ、「明日の看護が変わる」と謳ったセミナーを開催してきました。この度、セミナーでは語り切れなかった内容や解説を加え、新たに書籍として発刊することになりました。 看護師数は医師数の約5倍です。患者さんの傍に寄り添っているのは看護師です。状態が変化した場合に真っ先に気付くのも看護師です。医療の最前線にいるのは看護師なのです。この書籍が皆さんの明日の看護を変えることで、「明日の医療」がより良い方向に変わることの一助となれば、筆者としては望外の喜びです。 2019年9月
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