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口腔ケアの基本知識口腔ケアの沿革 看護理論家・看護教育の指導者として知られるヴァージニア・A・ヘンダーソン(Virginia Avenel Henderson、1897-1996年)が、著書『看護の基本となるもの』(日本看護協会出版会)の中で、“歯を磨くこともごく簡単なことであると多くの人は思っているが、意識を失っている人の口腔を清潔に保つのは非常に難しくまた危険な仕事であり、よほど熟練した看護師でないと有効にしかも安全に実施できない。実際、患者の口腔内の状態は看護ケアの質を最もよく表すもののひとつである”2)と、口腔の状態を良好に維持することの重要性を説いたことはよく知られています。 一方、我が国ではそれに先立つこと約半世紀前に『看護学教程』(日本赤十字社)や『実地看護法』(大関看護婦会)の中で、口腔を清潔に保つことが大切であること、またその方法が論じられています(図1)。その当時から、「歯磨き」、「口腔内清拭」あるいは「口腔洗浄」と 人間にとって「口から食べる」行為は、栄養を摂取し、生命を維持するために不可欠です。加えて「口から食べる」ことは料理を味わったり食事しながらの会話を楽しんだりと、日常生活を充実させる役割も果たしています。ですから、人生の最後まで口から食べ続けられるよう口の中を整えることが大切になります1)。A図1 明治38(1905)年発行の『看護学教程』口腔を清潔に保つ重要性とともにケアの方法が記されている(著者所蔵)。Ⅰ口腔ケアの目的は何ですか?01Q10

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