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 「歯がない人のところに、どうして歯医者が来るの?」、「キザミ食を摂っているのに歯科治療がいるの?」、私が訪問診療に携わりはじめた1994年当時は、珍しがられる反面、しばしばこういう言葉を投げかけられました。その度に必要性を説明するのですが、まだ十分なエビデンスがなく説得力に欠けたのでしょう、施設訪問を断られるといったこともありました。 その状況が変化したのは1999年でした。米山武義先生により、誤嚥性肺炎の発生率低下に口腔ケアが有効であることを実証するデータが、Lancet誌に掲載されたのです。これを機に、医療・介護・福祉の現場で口腔機能、口腔ケアへの関心が急速に高まりました。やがて筆者のところにまで、病院・介護施設や栄養士会での講演、看護やリハビリテーション関係の雑誌から執筆依頼をいただくようになりました。 講演や訪問診療の現場では、歯科治療に関することだけではなく、口腔ケアの問題、摂食嚥下の問題、義歯に関することなど多くの難問をいただきます。本書はそのときに頂戴した質問のメモを中心に、現場で具体的な問題を一つひとつ解決していけるようにQ&Aの形式をとって書いたものです。項目は「口腔ケア」と「摂食嚥下リハビリテーション」に大別してあり、基本的知識から状態別の対応方法まで、できるだけイラストや動画を使って解説しています。したがって、これから口腔ケに携わる方はもちろん、経験がある方にもすぐに役立ち参考にしていただけると思います。Q&Aという形式ですので、どの項目から読んでも理解しやすいように努めましたが、そのため一部内容が重複しているところがあります。通読すると、くどいように感じられるかもしれませんが、そこは大切なところとお含みおきください。 本書を活用していただくことが、口腔ケア・摂食嚥下リハビリテーションについて正しい知識と適切な技術を身につける一助となれば幸いです。廣瀬知二はじめに3

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