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はじめに 「概念化」には、「大枠をとらえること」、「重要なことを抽出すること」、「本質を見極めること」とさまざまな側面があり、管理者の意思決定場面には、なくてはならないスキルです。以前から必要で重要だと言われているにもかかわらず、看護管理者のなかで、「本当に概念化スキルを活用できている管理者は少ないのではないか」と全国の病院や看護協会での研修会を通して感じたのが、本書を書こうとしたきっかけです。 ある研修会で、私が受講者である看護管理者に対して、「抽象度を上げてください」、「要約してください」と課題を出したことがありました。しかし、皆、空欄で、ほとんど書けない事実に愕然としました。看護記録は看護職にとっての永遠のテーマと言われていますが、サマリー記載、申し送りも含めて、要約して書けない原因は概念化スキルの欠如ではないか、と納得した瞬間でもありました。看護職は感性に優れ、ずっと患者さんの具体的な変化を観察して行動してきています。そして、これまで、概念化スキルの教育は受けてきていません。できなくて当たり前、ならばいまこそ「概念化スキルをトレーニングする必要がある」、と確信したのです。 看護現場において看護管理者は多忙です。しかし、真面目な気質を持つ看護職は、忙しい管理業務ひとつひとつに真正面から対応していきます。概念化すれば少しでもまとめて解決できるにもかかわらず、日々の問題解決・スタッフ育成に疲弊しているのです。 本書は、自分を客観視して従来の思考パターンから脱し、概念化スキルを活用することで、忙しさを解消されるよう、事例を中心に解説していきます。本書の刊行を機会に、ひとりでも多くの看護管理者が「概念化スキル」を学び、習得し、トレーニングし、質の高い看護管理が展開されることを期待します。2015年8月河野秀一

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